メディカル最前線vol.56『腰椎変性すべり症』脊椎外科専門医の高度な技術に基づく、傷口・負担の少ない手術で早期の社会復帰を メディカル最前線 2023.7.20 やーさん 立ったり歩いたりしている時に足の痛みやしびれが生じる。が、少ししゃがんで休むと症状が楽になりまた歩ける(間歇性跛行)といった腰部脊柱管狭窄症と似た症状の腰椎変性すべり症がある。この病気の治療について西の京病院脊椎センター長の向井克容先生に話を伺った。 整形外科部長・脊椎センター長 向井 克容 医師 先生の健康法 若い頃の体型に戻すべく、負荷のあるウォーキングに加え、食事量のコントロールと筋トレで減量(10kg)しました! ■腰椎変性すべり症とは? 腰椎変性すべり症は、加齢による変化で、背骨同士の連結が弱くなることで背骨にずれが生じ、そのために、神経の通り道である脊柱管がふさがり神経が圧迫されて、腰や臀部から足にかけての痛みやしびれなどを起こす病気。50~70代に多く、特に4番目~5番目がずれやすいとのこと。 主な症状は、間歇性跛行で、休み休みでないと歩けなくなる。進行すると、両足麻痺や肛門のしびれが起き、さらに進むと排尿・排便障害も出てくる。 ■X線やMRI検査 まずは痛みがどこから来ているか、坐骨神経痛の出現や下肢の感覚等、神経学的に診断。さらに動態撮影を含むX線撮影やMRIで検査し、診断を確定する。 腰椎変性すべり症 MRI X線 ■治療 ◆保存療法 ◎初期・・・消炎鎮痛薬や神経ブロック療法などで痛みをコントロールしながら経過観察 ◆手術(展開の少ない低侵襲固定術) ◎腰椎の不安定性がない場合・・・骨を削って神経の通り道を広げる。◎腰椎の不安定性が強い場合・・・椎体間固定術(PLIF、TLIF)で背骨を支える。 固定にはスクリュー(ネジ)を使うが、傷口はできるだけ小さい低侵襲な方法でスクリュー刺入を行い、一か所の固定なら5㎝程度の傷で手術可能。手術翌日に離床。2~3週間リハビリ入院し、退院後は1か月・3か月・6か月・1年後と外来通院で経過観察。筋肉の展開をせずに、皮膚の上からスクリュー刺入の場合(経皮的椎弓根スクリュー)も。皮膚から突き出たガイドを利用しスクリュー間を連結。筋肉を骨からはがさないので筋肉のダメージが少ない。 腰椎椎体間固定〈手術後〉 傷口はできる限り小さく ※手術前に3次元画像でシミュレーションを行い、詳細に術前計画を立てる。※人工骨を足すが、削った骨も再利用しチタン製のボルトで固定、骨の再生を促す。 足腰の症状でお悩みの方あきらめないで! 腰部脊柱管狭窄症の病態は非常に多様で、手術治療方法も多種多様。医学的所見と画像などから総合的に判断し、個々の病態にベストな治療法を選び、専門性の高いチーム医療を行います。 脊椎センター副センタ―長 吉田 真 医師 <上右>整形外科医長 藤井 渉 医師 <上左> ■問い合わせ/患者支援センター TEL.0742-35-2219■取材協力/医療法人康仁会 西の京病院 TEL.0742-35-1122(メディカルプラザ薬師西の京事務局)奈良市六条町102-1https://www.nishinokyo.or.jp/