〈桜井市〉笠で育てたソバ100%の三たて蕎麦。女性パワーの結実28年!(荒神の里・笠そば) 自然と暮らす 2021.9.8 yuzu 笠そば女性部の皆さん。前列左から中森志保子さん、藤井美和子さん、井上悦子さん、田畑喜佐子さん、後列左から森文代さん、竹田智哉さん(麺打ち・ゆで担当)、 河合里美さん、藤岡幸江さん、竹森正恵さん。「自分たちが栽培するソバだけに力が入るし、毎朝栄養タップリの蕎麦湯を飲んでるから元気パワー全開でお待ちしてま〜す♪」 《連載》自然と暮らす vol.159 荒神の里/笠そば女性部の皆さん 笠で育てたソバ100%の三たて蕎麦。女性パワーの結実28年! 奈良市街から南へ約40分の山中にもかかわらず、連日人気を博す「荒神の里・笠そば処」。〝かまど〟の神様として信仰が厚い笠山荒神社のお膝下で開業28年。ソバの栽培から取り組んで地元産100%の三たて(挽きたて・打ちたて・ゆがきたて)蕎麦を提供し続けているのが、笠そば女性部の皆さんだ。 桜井市笠地区は、標高400~500㍍の中山間地域。気候・風土・昼夜の寒暖差がソバの生育に適しているのではと、国営総合農地開発事業に伴う造成農地の活用法として平成4年からソバの栽培に取り組んだ。 荒神そば 並630円(大1,020円) 次々に入る注文をスムーズにこなすチームワークが抜群! 作柄・品質ともよいソバが育ち、平成6年7月、地域で「笠そば女性部」を結成し、笠山荒神社前のプレハブに日曜限定でそば処を開設。JAの協力も得たそばピクニックやファミリー駅伝、蕎麦の実演販売など広報イベントも効を成し、その味は口コミで広まる。同9年には畑地も15㌶に拡大、土曜・祭日、荒神月例祭日の営業も始め、同年「全国農業新聞賞」を受賞。 同11年には全日営業に踏み切るが、そば処が手狭になり建て替えを決定。14年7月、笠集落の全71戸で㈲荒神の里・笠そばを立ち上げ、翌9月に現在の「荒神の里 笠そば処」開業に至った。「1軒1軒賛同を得るのには大分苦労したな~。でも軌道に乗ってからは、みな協力的!」とプレハブ当初から働く田畑喜佐子さんと井上悦子さん。 紅1点(2点の時も)は、体力仕事の蕎麦の仕込みと釜ゆでを担当。多い日は日に1,000食も 広い畑で大型機械が使え省力的、農薬散布不要で栽培できるソバを、メンバーの男性陣が育て、女性陣の手で蕎麦として提供、地区の女性が働く場の創出も担う。19年「立ち上がる農山漁村」、近畿農政局「地産地消」、奈良県「もてなしのまちづくりモデル地区」に選定・表彰され、県や全国の農業賞など多くの賞を受賞。 同処の蕎麦は、やや細打ちの挽きぐるみ、香りが良くコシがあって、1~2割のつなぎでのどごしの良い仕上がりだ。つゆもまろやかながらコクがあり、蕎麦を引き立てる。だが、創業当初は苦労も多かった。女性部全員が家庭の主婦。プロの味を作るため、蕎麦の本場を訪ねての研修や客のアンケートも参考に何日も試行錯誤を重ねたという。 「あら、お久しぶりです。元気にしてはりましたか ?」とか、客への温かいもてなしが好評 シイタケやネギなど地元の高原野菜や山菜を使ったメニューも豊富だ。季節の野菜を使った「かやくご飯」や「浅漬け」は蕎麦のお供としての人気品。秋に小豆の収穫をすれば「そば団子入りぜんざい」と、女性たちの奮闘は蕎麦に終わらない。 笠山荒神社/毎月28日月例祭、毎土日曜、祝日は社殿開扉・祈祷受付 9月中旬から10月初旬頃まで、笠そば処からも花咲くソバ畑を遠望できる 笠の農家が丹精込めて作る米、野菜や果物の販売に着手、餅、おかず味噌みそ、漬け物などの加工品、蕎麦かりんとうや米粉ケーキなどのスイーツ類も手がける。客は蕎麦の味わいと共に、野菜の味の濃さに驚き惹ひかれ2回、3回と訪れる。 乾麺箱詰小 1,650円(乾麺250g×3+80㎖つゆ×4)★電話・Fax注文および地方発送可 乾麺250g入 330円 乾麺つゆセット2人前 430円 ざるそば 並520円(大930円) そばかりんとう 100g入 250円 おかずみそ 各150g入 260円 現在50歳~77歳までの25人が所属、平日8~9人、土日祝には13~14人が出動。「いい職場。都合のいい日に働けるし、地区の者は自分とこで作った農作物を売って小遣い稼ぎもできる」と、手際よく客の注文に応じながら、臨機応変に持ち場を守る間も笑顔が交差する。「ここがコミュニケーションの場。種まき時期とか育ち具合や子育て・老父母の世話の相談とかの情報交換などね」と、自称「看板娘」の中森志保子さん。 「子孫にいい土地を残そう! と僕らの親世代が始めました。後継者問題が浮上していますが、〝生かすも殺すも自分たちの努力次第〟。体力の続く限り次世代へ繋げるよう頑張ります」と社長の山本信廣さん。 笠のソバは、8月中旬に種がまかれ、9月中旬頃に白く可憐な花をつける。笠の地がまるで白い絨毯じゅうたんを敷き詰めたかのような景色に変わる。10月末に刈り取られ、11月15日からは〝新蕎麦〟の提供となり、それを味わおうと遠く県外からも蕎麦好きたちが足を運ぶ。 客の要望でできた農産物直売所。 笠地区でとれた高原野菜や苗、 乾蕎麦や加工品などを販売。 9:00〜16:00(土日は8:30〜) ソバ打ち体験 日時:水曜を除く平日 ①午前の部 10:00〜 ②午後の部 13:00〜※土曜は午前のみ 1人1こね 2,500円 ※1こねを2人でする場合は+500円 前日までの予約 ※2人2こね〜 (当日キャンセルは費用の50%要) Profile 荒神の里・笠そば KOUJIN-NO-SATO KASASOBA 笠山荒神社を中心とする桜井市笠地区の住民が一丸となって行うソバの栽培、蕎麦処・野菜直売所の運営の中心を担う地元婦人の組織「笠そば女性部」。女性の働き場所創成&生きがいづくりの場として稼働中。