〈奈良〉古代楽器に魅せられて― 日本の音楽の原点をさぐる/ピアニスト・作曲家 榊原 明子さん 奈良もん 2024.10.17 鮎 奈良で活躍する“奈良もん” 今回は、古代楽器と考古学を研究する、ピアニストで作曲家の榊原 明子さんをご紹介! 今夏、奈良市の平城宮いざない館にて開かれた企画展『万葉挽歌』。元中学校美術教諭の永瀬卓さんが制作した古代の奈良をテーマにした人形を展示し、モデルとなった人物の歴史的背景を観る展覧会だ。 同展において音楽監修を担当し、復元された古代楽器などを用いた展示会楽曲を作曲・編曲したのが奈良市在住のピアニストで作曲家である榊原明子さん。図録には残らない音楽も形に残したいと8月には同展のサウンドトラックCDを発売した。 榊原さんは3歳の頃から音感教育を受け、神戸大学で音楽表現を学んだ後にピアニスト・作曲家として活躍。音楽活動の中で伝統芸能や民俗音楽との共演をきっかけに、「日本の音楽の源流を探りたい」と奈良女子大学大学院で古代楽器と考古学について研究している。 遺跡などから出土する楽器は部材が失われていることが多く、当時の音がわからない上、いつどこでどのように演奏されていたかも不明な点も多いという。榊原さんは出土資料から当時の楽器の役割について研究するほか、古代楽器の復元に携わる美術工芸家・菊池孝さんの下で楽器制作にも取り組む。 「考古学と造形と音楽、3つの視点で古代楽器や当時の音楽を見つめられるのが私の強み。古代楽器が奏でる音には日本列島の気候風土の中で醸成されてきた、先祖から受け継がれるアイデンティティーとなるようなものがあるのではないかと。それを知りたい一心で研究に取り組んでいます」 『万葉挽歌』で作曲した3曲には、当時奏でられていたと考えられる「藤原京右京十条四坊出土琴」や土笛などの復元楽器を使用。また「平城京右京八条一坊側溝出土銅鈴」の現物の音も収録されている。 日本の文化・文明のおこりとその夜明け、政争に巻き込まれた悲劇の人々を悼む思い、祭祀の音色から音楽へと遷る様など、古代日本を生きた人々へのリスペクトが表現された。 「これからもたくさんの人の想いを音に変えて表現していければ」と語る榊原さん。11月には平城宮跡で行われるイベントにも出演予定だ。古代と現代が融合する唯一無二の音楽を楽しみ、天平の時代に思いを馳せてみよう。 [関連記事] 令和6年度平城宮跡資料館秋期特別展聖武天皇が即位したとき。—聖武天皇即位1300年記念— 2024/10/22(火)〜12/8(日) 9:00~16:30(16:00最終入館) ¥:入館無料休:月曜(祝日の場合翌平日)問:0742-30-6753(奈良文化財研究所総務課広報企画係) イベント詳細はこちら 11/23(土・祝)平城宮跡ナイト☆サイト☆ミュージアム 「聖武天皇の即位1300年をお祝いしよう!」に榊原さんが音楽監修&出演します!