編集長のメッセージ(6月)

先日、奈良県立高田高校の授業に講義に行かせていただいた。同校に取り入れられている「探求」という科目だ。

これは生徒が自主的に興味・関心を持った事柄を自分で調査・研究し、発表を通して課題解決していく学習プログラムとのこと。具体的には『福祉と共生』『やまと学』『海外事情』『環境』などいくつかに分かれていて、必要とあらばフィールドワークにも出かけている。私の担当は『地域創生』。まちの課題解決のために何かをしたいという生徒が集って、真剣に私の話を聞いてくれていた。

この『探求』という授業、とてもいいと思う。ちょっと大学のゼミの予行演習みたいなものだろうか。最近はチャットGPTが話題になっているが、AIが簡単に何でも答えてくれる世の中になってきたので、自ら調べたり考えたりする機会が減っていくのではと懸念される中、とても大切なことではないか。

今、NHKの朝の連続ドラマ「らんまん」で、植物学者・牧野富太郎の人生を描いているが、その中で主人公の万太郎が机上ではなく、実際に採取して観察し、また匂いを大切にする姿を見ていて、つくづく本物を見ないとわからないと共感する。

私も中学2年の時に、植物採集に夢中になったことがある。夏休みの自由研究で選んだのだが、常々この身近な雑草たちはなぜ生えていきて、何か役割があるのかなと思ったのがきっかけだった。なので、テーマは身近な雑草たちにしたのだが、調べると意外にも薬になるものが多かったり、実が食べられるものがあったりと、それぞれが個性的であり、とても面白かった。お蔭で銀賞をいただいたが、金賞でなかったのが残念だった。

現場に行き、肌感覚で感じること。私は長年地域づくりに携わってきたが、これとて然りである。いくら地域づくりのノウハウや過去の事例を学んだとしても、実際に現場に出ないとわからない。いや、ほぼ現場が90%を占めるといっても過言ではないかもしれない。行ってみて、現場の様子を見て、場合によっては地域の人から話を聞いて、肌感覚で知ることが最も有効だと思っている。

スマホやゲームがあふれ、めまぐるしくトレンドが変わっていく昨今、ぜひネットの世界ではない本物の世界にしっかり目をむけてほしいものだ。

よみっこ編集長 朝廣 佳子

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