春日若宮おん祭で有名な春日大社の若宮神社が、昨年式年造替を終えられ、美しい朱塗りの御殿と生まれ変わった。
そして完成した御殿に若宮様がお戻りになる儀式がNHKで生中継された。
20年に1度の秘儀が中継されたわけだが、真っ暗な中で進まれる神様のお引っ越しの様子はあまりにも神秘で、心打たれた方も多いだろう。
それを観て、東京からわざわざ一人の女性が奈良に来ることになった。
彼女は障害2級の車いす利用者。
私が関わる奈良バリアフリー観光ツアーセンターに連絡があり、サポートしてほしいということで、当日のタイムスケジュールを制作、介護タクシーと介護士さんの手配をし、当日彼女を近鉄奈良駅で出迎えた。
旅は彼女一人、電動車いすで東京から新幹線と近鉄を乗り継いで来た。
なんとテレビで観た春日若宮様にお参りするためだけに今回奈良に来たのだ。
だから春日大社にだけ寄って日帰りで帰られた。
春日大社では電動車いすから手動車いすに乗り換えて、本殿の手前まで進み、そこからは階段なのだが、職員の方が3人来てくださって介護士さんと4人がかりで車いすごと持ち上げて本殿に特別参拝させていただくことができた。
その後、若宮様だ。本殿から砂利道を車いすで進み、また階段を皆で上げて無事に新しい若宮様にお参りされ、とても感動して戻っていかれた。
特に、障がいの性質上トイレが近く、何度もトイレに寄らなければならないので、拝観できる場所が限られる。
でも彼女はゆっくり進む分、春日大社の方の説明を聞きながら燈籠やご神木などをじっくり見て回り、堪能されているようだった。
今回、初めて東京から一人旅をされたということで、奈良がとても好きだと言って帰っていただけたことは何よりだ。
バリアフリーといえば、奈良の社寺では東大寺が一番早く取り掛かったように記憶しているが、薬師寺も見事にほぼすべての伽藍に車いすで移動して中に入り拝観できるようになっている。
高齢化社会がますます進む中、どうしてもここだけは行きたいという場所も増えてくるだろう。
あらゆる方に奈良を満喫していただくために、少しずつ取り組みが進めばいいと願う。
よみっこ編集長 朝廣 佳子