Boze数珠繋ぎ#261|長谷寺・水野 誠圓 師

若いお坊さんへのリレーインタビュー

「Boze数珠つなぎ」

#261

Profile

真言宗豊山派総本山 長谷寺 総務部書記
大御堂寺(野間大坊)副住職

水野 誠圓 師

みずの せいえん

1994年生まれ。31歳。
愛知県知多郡生まれ。
大正大学卒業。長谷寺研修所修了。
2019年より長谷寺勤務。

長谷の観音様に導かれて

私は長谷の観音様で知られる長谷寺で勤めています。身の丈10メートル18センチある観音様は、特別拝観の際にはお御足に直接触れることができ、とても近くて親しみやすい観音様です。そんな長谷の観音様のもとで奉職させていただき、7年目になります。
私の自坊は愛知県知多郡美浜町にある大御堂寺というお寺で、源頼朝公や義経公の父親である源義朝公のお墓があることで知られています。ご本尊であるお地蔵様は源頼朝公が幼少期に拝んでいた念持仏です。先述したお地蔵様の他に、狩野探幽作の源義朝公が暗殺されるまでの様子が描かれた掛軸など、自坊の様々な魅力を発信する方法を勉強しながら長谷寺で勤めています。
そんな源氏との関わりが深いお寺の住職である父のもと、姉2人の末っ子長男として生まれ育ちました。兄弟で男子が私だけだったため、気付いたら僧侶になるためのレールの上を歩んでいました。

訳もわからず9歳で得度し、お正月には護摩祈祷している父親の横に衣を着させられ、座らされておりました。母親にその姿を“客寄せパンダ”と言われたことは今でも忘れません。それでも我慢して耐えられたのは、ご褒美として境内の出店で遊んでいいよと言われたからでした。

小中学校では野球に打ち込み、高校では少し珍しいですが和太鼓部に入部しました。長谷寺は朝勤行などの法要で般若心経や観音経に合わせ、景気よく太鼓を打ち鳴らします。和太鼓を長谷寺で生かせられたことは私にとってありがたい誤算でした。
高校卒業後、大正大学にて僧侶としての勉強や修行を積み重ねました。2年生の際には、僧侶になるために欠かせない修行である、40日間の四度加行を長谷寺で受けました。正座には慣れているし、お経も基本的なものは覚えていたため幼少期の経験がここで生きたかと、父親に少しだけ感謝しましたが、行中は裸足なので、礼拝行が続くと足の皮がめくれて痛かったです。
大学での修行や勉学が落ち着いた頃には一般的な学生と同じようにアルバイトもしており、3年生、4年生の2年間は浅草で人力車夫のアルバイトをしました。お客さんに対して営業をするため、自ら営業をすることのない僧侶になった今考えると、貴重な社会経験となりました。
バイトや私生活ばかり満喫していた私はこのままなんの苦労もなく、実家に帰ってあぐらをかいていいのかという漠然とした迷いがあり、大学卒業後、長谷寺研修所で2年間修行することを決心しました。
長谷寺研修所は大学を卒業した希望者が入所するより実践的な修行の場です。毎年数名は入所希望者がいるのですが、なんの因果か、私の代は私1人しか入所希望者がおりませんでした。1人だったため先生方の手厚いご指導のありがたさを身に染みて感じましたが、少しの隙もなかったため、手の抜けない2年間でした。
2年間の修行を終え、いったんは自坊に戻りましたが、長谷寺の職員が少なかったため、勤めるように声をかけていただきました。半年間と限られた期限付きでのお話が、月日は流れ、いつの間にか奉職7年目となりました(笑)。
予定より長く勤めておりますが、長谷寺研修所で私1人だったからこその巡り合わせだと過ごしていくうちに気付きました。奉職し始めた頃は右も左も分からず苦労も多かったですが、幼少期からの経験すべてが長谷寺での生活につながっており、それは単に偶然ではなく観音様のお導きによってあることを、本堂で手を合わせるたびに年々強く感じるようになりました。
また、2年前にお参りに来た際、偶然私を見かけた女性が、現在私の妻です。今まで縁もゆかりもなかった人と結婚するに至ったことも観音様のお導きのように感じる出来事の一つです。しかも妻と出会った後にお寺の娘さんであることを知り、観音様の御縁結びの強さをさらに感じ入りました。
長谷寺は花の御寺とも言われるほど四季折々、様々な花々で境内が彩られるお寺です。春は空から降ってくるような桜、そして牡丹ボタン紫陽花アジサイ、夏の新緑、秋の紅葉、冬牡丹などいつお越しいただいても楽しんでいただけます。
紫陽花およそ300鉢を回廊に並べる「あじさい回廊」も、インスタ映えするということで、多くの方に訪れていただいております。
もう一つの魅力は何といっても最初にお話ししたように、観音様のお御足に直接触れてお参りできることです。私のように観音様を通じて身の回りの尊いつながりやご縁を感じていただけましたらうれしい限りです。皆様のお参りを心からお待ちしております。
御朱印を書く水野師
●金色御影御朱印
長谷寺のご本尊十一面観世音菩薩の御尊影を金色のお姿で表した特別御朱印。
1枚2,000円

聞き手:朝廣佳子

基本情報 Basic Information
長谷寺/はせでら
  • 住所: 奈良県桜井市初瀬731-1
  • 拝観時間:
    4月~9月/8:30~17:00
    10・11・3月/9:00~17:00
    12月~2月/ 9:00~16:30
  • 入山料: 大人(中学生以上)500円、中・高生500円、小学生250円、障害者手帳表示250円
  • アクセス: 近鉄大阪線長谷寺駅を下車、徒歩15分。車の場合は名阪国道針インターから桜井方面へ
  • 駐車場: あり(有料)
  • TEL: 0744-47-7001
  • HP: https://www.hasedera.or.jp/
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