若いお坊さんへのリレーインタビュー
「Boze数珠つなぎ」
#248
Profile
上司 永観 師
かみつかさ えいかん
1997年生まれ。
奈良市生まれ。26歳
11歳で入寺、13歳で得度。
龍谷大学仏教学科及び修士課程修了。
2021年四度加行満行。
同年11月から東大寺二月堂に勤務。
人のために生きる僧侶を目指します
今年3月の、1272回目の修二会(お水取り)に、このたび初めて参籠させていただくことになりました。この号が出る頃、私は別火(べっか)といって、すでに前行に入っております。
皆様ご存じのように二月堂修二会は、3月1日から14日まで二月堂に籠ってあらゆる方々の罪穢れを懺悔する悔過法要です。
行は1日六座あり、正午から深夜23時頃、遅いと午前1時や3時といった時間まで続きます。その六座のうち19時から行われる初夜では、練行衆が上堂する時に童子さんがお松明を一人に一本道灯りとして持って前を歩きます。
練行衆がお堂に入ればそのお松明の火を消すために、お松明を豪快に振り回しながらお堂の欄干を走るのです。それを皆様楽しみに見ていただいていると思います。
お経というのはだいたい静かなものですが、修二会のお経は全然違います。
どんどんテンポは速くなるし、アグレッシブでエネルギッシュです。
お堂の中は暗くてよくは見えませんが、所作もとても楽しそうでヒーローみたいだと幼少の頃から憧れていました。
だから、今年名前が呼ばれたことが本当にうれしく、さらに師僧である父が今年、最高責任者である和上を務めることになりました。
親子で和上と処世界をさせていただけるのが有り難くて、師僧に恥をかかせないよう今からしっかり頭に叩き込むつもりです。
こんな私ではありますが、子どもの頃からずっと僧侶になるのには抵抗がありました。
剃髪も嫌でしたし、同級生にからかわれるのも内心面白くありませんでした。
両親はお寺の子だからということは特に押し付けず一般家庭同様に普通に育ててくれました。だからクリスマスのお祝いもしてくれました。学校も地元の中学、高校に行き野球三昧でした。
成長するにつれ、だんだん僧侶への道が近づいてきます。同級生たちは将来の夢があったりやりたいことがあったりするのに、私はどうしてこの家に生まれてきたんだろうと。
幸いうちは家族仲が良くて、そういう話をしょっちゅう両親にぶつけることができました。両親はいつもちゃんと聞いてくれて、父は自分も葛藤があったけれど決意したこととか、母も宿命は受け入れなさいと親身に諭してくれました。
大学は龍谷大学へ進み、さらに修士課程を終えました。
卒業後、東大寺で4月~9月の6か月間、四度加行を受けました。僧侶になる資格試験のようなものです。いよいよ僧侶への一歩を踏み出したという気持ちでした。
四度加行は一人でお堂に籠って仏様の前で、1日中決められた行をします。
朝3時に起きて5時半にはお寺の諸堂を回ります。その後、最初のうちはひたすら礼拝行、終われば次に進みます。
ムカデが畳の間からにょきにょき出てきたり、ヤモリやカエルがきたりするのですが、殺生はいけないので、何とか外に出て行ってもらうのに格闘しました。
また掃除だけは一生懸命やりました。すると掃除が楽しくなってきてますます頑張りました。
毎日朝から夜まで一人で行をしていると、いろんなことが頭に浮かびます。
まず、何不自由なく暮らしていた日頃がどれだけ自由で恵まれた毎日だったかを痛感しました、そのうち自分のいいことも悪いことも浮かんでくるようになり、自分と対峙することが多くなってきました。
今度は、毎日同じことを繰り返しているのに仏様のお顔が何となく毎日違うと感じるようになりました。
「あれ、今日は笑ってはるわ。ちゃんとできたかな」「今日の観音様は何か怖い。真剣さが足りなかったかなあ」とか。
そして仏様が見守ってくださっているから自分と対峙できたのだなど、いろんなことに気づくようになりました。
でも心構えは大きく変わりました。それは、苦しみを除いてほしいと仏様に願う人たちを少しでも救うために真剣に祈りたいと心から思うようになったことです。
自分一人と対峙するのも苦しかったので簡単なことではないですが、覚悟を決めて、これから学びと経験を積みながら、人のために生きる僧侶を目指します。
《2023練行衆11人配役》
和上=上司永照・持宝院住職
大導師=森本公穣・清涼院住職
咒師=上野周真・真言院住職
堂司=池田圭誠・金龍寺住職
北座衆之一=佐保山暁祥・宝珠院住職
南座衆之一=中田定慧・隔夜寺住職
北座衆之二=平岡慎紹・上之坊住職
南座衆之二=狹川光俊・北林院住職
中灯=清水公仁・宝厳院住職
権処世界=望月大仙・普賢光明寺住職
処世界=上司永観・持宝院徒弟(新入)
《2023年の修二会(お水取り)の規制について》
●3月1日~14日(11・12日は除く)はお堂の下庭で拝観OK(人数制限あり)
●3月11日・12日はお松明拝観は中止
●3月1日~14日すべて二月堂内への入堂は禁止
■東大寺「修二会の声明公演」
東京 5/20(土)、大阪 5/13(土) 各14時~
聞き手:朝廣佳子