若いお坊さんへのリレーインタビュー
「Boze数珠つなぎ」
#247
Profile
田中 佑昌 師
たなか ゆうしょう
1990年京都府綾部市生まれ。
龍谷大学仏教学科卒業。
2016年金峯山寺入山。同年、四度加行。
2017年開壇灌頂を授かる。
2022年から金峯山寺本堂主事。
人は一人で生きているんじゃない
吉野の金峯山寺で本堂主事として勤めさせていただいております。
自坊は綾部の修験の寺で、月に1度、護摩法要などに合わせて帰っています。
昨年は大峯山上の大峯山寺に5月から9月まで奉職させていただき、山上で過ごしました。登ってこられる方にお話をし、ご祈祷をさせていただきます。修行僧の方、一般の方、様々な方が大峯山に登ってこられるのですが、ここまで来てご祈祷を依頼される方はとりわけ思いが強い方が多いように感じます。何か気が伝わってくるというのでしょうか、こちらもますます真剣になりました。それがすごくいい経験になったと思います。
大学3年になり、将来について悶々としていた時に奥駈行(おくがけ)を進められ、軽い気持ちで参加しました。大峯山から弥山、前鬼山へと5日間かけて行う厳しい行です。参加者は一般の中高年が大半で、私はその中では最年少、自信満々でした。最初の3日間は清々しい気持ちで歩いていたのですが、4日目から足が動きません。歩くと痛くて転びます。他の方の力をお借りして何とか進ませていただきながら、情けなくて涙が出てきました。20歳の私がこんな状態なのに70歳の方は元気で歩いている。この差は何なんだろうと。また、途中で私を下ろせば皆さんの労力も軽くて済んだのに「下りろ」とは言わず、最後まで一緒に付き合って私を助けてくれました。それが有り難くて感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
修行が始まってから2年後、いよいよ私も百日行に挑戦させていただくことになりました。百日の間、回峰と参籠にあけくれ、1日たりとも休めないとても厳しい行です。ところが78日目から体調がおかしくなってきて、80日終わったところで体が動かなくなりました。どんなことをしても登りたい、どうしても満行しなければという思いの一方、この80日の間、私は自分一人で歩いているんじゃないことを思い知りました。食事を作ってくださる人、心配して見守ってくださる人、道路を整備してくださる人、自分一人が登っていると思ったら大間違いでした。そんな思いに駆られました。
金峯山寺の三大行事
●節分会 鬼の調伏式/2月3日
「福は内、鬼も内」と唱える全国でも珍しい節分会の行事、鬼火の祭典。
●花供懺法会/4月10日~12日
一千年の歴史を持つ伝統法会。鬼やお稚児さん、山伏、僧侶らが行列をする
●蓮華会・蛙飛び行事/7月7日
役行者が産湯を使ったとされる弁天池の蓮の花を蔵王権現に供える法会。法要の後、蛙飛びの儀式が行われ、めでたく蛙が人間の姿に戻る。
聞き手:朝廣佳子