〈開催レポ〉奈良好きによる奈良好きのためのマニアック奈良市内ガイドツアー 第7弾

アジールさんぽ「おとなの遠足」
~いま、ふたたびの奈良へ~
11/1(金)・2(土)・3(日)各日9:00~

奈良時代から現在まで折り重なった歴史を目の当たりに

ホテルアジール・奈良が昨春から主宰する奈良マニアックツアー「アジールさんぽ『おとなの遠足』第7弾」が、11/1(金)・2(土)・3(日)に開催されました。
今回は、京都と奈良をつなぐ街道筋(奈良阪)から大和の北の玄関口「きたまち」エリアを巡るミニ旅でした。
ユネスコ無形文化遺産に登録された翁舞が奉納される「奈良豆比古神社」での資料館や、「西福寺」「五劫院」での重要文化財の見学・拝観は、このツアーだけの特別公開。そして、秋桜が見頃の「般若寺」を経て、東大寺では2回の戦火を免れ、奈良時代から同じ場所で現存する国宝「転害門」を訪ねました。
※2日は悪天候のため中止

翁舞・樟の巨樹で知られる奈良豆比古神社ならづひこじんじゃ

季節外れの台風で心配された天候も昼過ぎまでは大丈夫そうと安堵してスタート。初日の11月1日の参加者8名は2班に分かれてホテルの送迎バスで現地の奈良阪まで。 車中では、ホテル前の「油阪」は社寺の燈明用の油商が多かった地であること、正面に見える「春日山」は太古の時代より一度も斧が入れられていない神聖な山であること、県庁のある地まで興福寺の境内であったことなどを聞き、京都へつながる「奈良街道」筋に入って「奈良阪」の地までに簡単な予備知識を得ました。
バスを降りた奈良街道北端部で登録有形文化財の「山崎家住宅御主屋」、続いて江戸奉行の高札、大きな石の道標などを見ながら最初の目的地「奈良豆比古神社」へ。
「奈良阪の氏神さん」として地元で大事に守られてきた古社ではまず春日造の三神殿に拝礼し、氏子の古老とガイド両者からその由来などについて説明を受けました。
「歌舞音曲の司神」を祀る同社では、能楽の源流「猿楽」が発達した地とされ、国の重要無形文化財「翁舞」が地元の人々により連綿と継承されています(毎年10月8日の宵宮)。室町時代初期の銘を持つ最古の面なども多数現存していますが、今は奈良国立博物館に移管、資料館に写真で展示されていました。
境内裏手には樹齢1200年以上とされるご神木「樟の木」がそびえ立っています。根元幹回り約13㍍、樹高約30㍍の巨樹は、奈良県の天然記念物指定第一号。あたりには厳かなオーラが漂うようで、参加者の皆さんは、拝んだり手を当てたりしてそのパワーをいただかれていました。またその脇には金魚の尾ひれのような葉の形をした珍しい「金魚椿」の木も見られました。

「西福寺」や「五劫院」での重要文化財の見学

続いては奈良豆比古神社隣の迎接山西福寺(浄土宗)です。住職夫人の案内で本堂の本尊阿弥陀如来様をはじめ、めったに公開されない宝蔵庫の阿弥陀如来、釈迦如来、薬師如来(いずれも平安時代/重文)三尊像等を拝観させていただきました。
ここだけの話っぽい驚きの事実も披露くださり、皆で「あら~、ホントだ!」などと盛り上がりました。

秋桜が見頃の「般若寺」に遊び、植村牧場で一服

般若寺へは、道すがら鹿せんべい製造店(まちかど博物館)を目にし、同寺の楼門(鎌倉時代/国宝)を見学、近隣にホテルに改修中の元少年刑務所があることなども耳にしながら街道を下って入口へ。
待ち受けるように満開となった境内のコスモスにまず歓声が上がり、本堂前のガラスの器によるコスモスのカラフルな荘厳に見入りました。
本堂では、獅子に乗った文殊菩薩像(鎌倉時代/重文)を拝観し、境内の十三重石宝塔(鎌倉時代/重文)や笠塔婆、一切経蔵などを巡り、その縁起などの解説後は、それぞれに〝コスモス寺〟を楽しみました。
続いては、般若寺の道向かいにある植村牧場でおやつタイム。フレッシュなおいしさで人気のソフトクリームやアイスもなかをいただき、ホッと一服。乳牛に交じった仔牛や草を食む羊などにスマホカメラを向けて楽しいひとときを過ごしました。

街道沿いの名所をチェックしつつ、五劫院へ

次の目的地「五劫院」へ向かう街道沿いでは、「奈良坂の 石の仏の おとがひに 小雨流るる 春は来にけり」(会津八一)の「夕日地蔵」や、鎌倉時代、ハンセン病患者救済のため忍性が設立した療養施設「北山十八間戸きたやまじゅうはちけんと」、「佐保川に架かる旧京街道の石橋」で当時の橋脚なども見学しました。
思惟山五劫院しゅいざんごこういんでは、本尊の五劫思惟阿弥陀仏坐像の御前で副住職による縁起などの説明を受けました。東大寺を再興した俊乗坊重源上人が、宋から請来され祀られたこと、〝五劫思惟〟とは計り知れない期間の修業・思考を意味すること、頭髪の長さがそれゆえなのだと話されました。珍しいヘアスタイルの〝アフロ仏〟様は、柔和で優しい表情の仏さまでした。
同寺では大伴氏の伴墓に重源上人を、寺内墓所には東大寺中興の公慶上人を祀るなど、東大寺の菩提所でもあるとのことでした。

奈良時代から同じ場所で現存する国宝「転害門てがいもん

五劫院から正倉院の裏手を回って「転害門」(奈良時代/国宝)へ。2度の戦火も逃れた東大寺伽藍の天平時代唯一の遺構で、その構造と規模の雄大さに目を見張りました。 東大寺鎮守・手向山八幡宮たむけやまはちまんぐうへ宇佐八幡宮からの神様の御旅所に使われており、基壇中央の格天井と神輿みこし安置の小礎4個とがそれを示しています。祭礼「転害会/10月5日」は、現在でもここで神輿を迎える神事が行われています。

昼食に「かがりや 秋の昼膳」をいただき、旅の余韻に浸る

内容たっぷり、奈良の深掘りツアーを楽しんだ一行は、迎えのバスでホテルへ。ホテル併設の食事処「日本料理かがりや」で、米、野菜、肉、葛など奈良の食材をふんだんに盛り込んだ秋の味覚満載の『秋の昼膳』コースに舌鼓を打ちました。
遠く浅草からの男性は「50回以上奈良に来ていて、奈良は大抵知っていると思っていたが、このツアーで、奈良はまだまだ奥深く知らない所・事がいっぱいあると感じた。これからが楽しみ」と。
茅ヶ崎や神戸からの女性は「ネット検索で知ってきました。奈良がますます好きになりました」。山科からの女性は「夏の発酵ツアーがとても良かったので今回も。期待以上でした。また来ます」と、ツアーを逐一楽しまれていました。
東大阪からのご夫婦も「この料金で、盛りだくさんの旅にこの馳走膳。いいのかなあ」と大満足げ。
愛媛県新居浜市からのご夫婦は、奈良豆比神社の太鼓台や転害門の大注連に大層関心を示され、「とてもいいツアーでした。地元の太鼓台祭の間隙を縫ってまた来たい」と、このツアーに巡り合えたことを喜ばれていました。

まだまだ続くよ、奈良の深掘りツアー、次回は冬。お楽しみに

奈良検定を持ったホテルマネージャーやスタッフ、そして奈良好きを極めた「なら・ボランティアガイドの会 朱雀」理事兼奈良まほろばソムリエ企画による奈良推し全開ツアー。 大仏や奈良公園以外の観光スポットを探している方、春夏秋冬の奈良を楽しみながらちょっと歩きたい方、さらに奈良のグルメも味わいたいという方にオススメの旅。1班5~8名の少人数でガイドさんの話が聞ける、ゆったりとしたツアーです。
ネット検索でも見つからない、奈良生まれで奈良育ちでも知らない奈良、いつもとは違う奈良のおもしろい場所、すごいところを巡るミニ旅にいざいざ。
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