若いお坊さんへのリレーインタビュー
「Boze数珠つなぎ」
#246
Profile
真言宗室生寺派 霊園山 聖林寺
倉本 大玄 師
くらもと たいげん
1995年奈良県桜井市生まれ。27歳。
2017年室生寺で四度加行満行、
伝法灌頂を受ける。
2019年から聖林寺僧侶。
2017年室生寺で四度加行満行、
伝法灌頂を受ける。
2019年から聖林寺僧侶。
360度観音様をご覧いただけます
桜井の聖林寺で僧侶をしております。
この度、多くの方にご協力をいただきまして、国宝・十一面観音菩薩像の新収蔵庫が完成しました。工事期間中は、2021年6月に東京国立博物館、2022年2月から奈良国立博物館に観音様に出張いただき、7月に新収蔵庫が完成してお戻りいただきました。前の収蔵庫より広さは2.5倍になり、床は吉野杉に覆われ、天井は真っ白なドーム型で、360度全方向から観音様をご覧いただくことができます。
また、前室には同じく吉野杉のベンチが設置されていて、ベンチに腰掛けて観音様と向き合うことができます。ここに何時間も座って観音様を眺めておられる方、ガラス越しにあらゆる方向からじっくりと観音様を眺められる方など、多くの方がそれぞれに観音様とご縁を結んでいただいております。
この新収蔵庫建立にあたり、3度のクラウドファンディングを行い、約2千人もの方にご協力をいただきました。それ以外にお寺に直接寄付いただく方や補助金を入れて、1億7千万円という多額の予算を使って完成したものです。皆様には感謝しかありません。
ですが、完成に至るまでに悲しい出来事が多々ありました。このプロジェクトは母である住職と、お寺に直接関係ないシステムエンジニアの父も入り、檀家さんや建築家の先生らが中心となって進めておりました。
そんな矢先、父が急逝したのです。4年前の12月です。頑丈な父が、ある日の夕方突然倒れてそのまま逝ってしまいました。50歳でした。あっけなさすぎて、おそらく父自身も自分が死んだ意識はないと思います。
その後の母は別人のようにやつれて大変な状況でした。私は両親からいずれお寺を継ぐにしてもまず社会人になりなさいと言われてきたので、東京の大学で学んでいる最中でした。これは帰るしかないと心を決めて大学を中退してお寺に戻り、そのまま手伝うことになりました。
僧侶の資格は大学時代に本山の室生寺で、四度加行と伝法灌頂を受けておりました。一時はどうなるかと思った住職(母)も、プロジェクトはすでに進行していたので、それに向かって突き進んでいきました。でもコロナがやってきて、国立博物館での展覧会も延期になりました。
展覧会が先に延びて、住職としては少し時間の余裕を持って資金集めに奔走することができたようです。結局、展覧会は東京、奈良とも1年ずつ延びて行い、お陰様で多くの方にご覧いただくことができました。
また、一緒に苦労していただいた責任役員のお一人や、長年聖林寺観音像の光背を研究された先生など、この事業に携わってくださった方々も完成の日の目を見ずして亡くなってしまいました。しかし、生前ご関係者にご縁をつないでいただいたお陰で、浄財を集めることができたと住職は言います。
なので、この完成は我々にとって大切な人たちの思いをカタチにすることができて、喜びはひとしおでした。こんな悲しいことを背負いながらこの大事業を成し遂げられた住職のことを、私は心の底から尊敬しています。
住職の多忙さはひときわで、何とか私も役に立ちたいと思うのですが、やはり住職じゃないとできない仕事が多く、ジレンマを感じています。
そもそも僧侶になぜ男性が多いのか、自分がなってみてわかりましたが、結構体力のいるキツイ業務が多いのです。力仕事や大きな声でお経を読む、物を運ぶなど、男性じゃないとしんどいだろうなと思うことが多いです。
それに日々取り組んでいる住職は私にとっては誇らしいのですが、その反面、私の時代になった時、私に何ができるのだろう、住職とは違う形でどうやって盛り立てていくことができるの
だろうと、今から考えてしまいます。
これからも本山の室生寺に通いながら、もっともっと学んで実力をつけ、自分なりの道を作りたいと決意を固めています。
聖林寺は国宝十一面観音様で有名ですが、ご本尊は像高3.5mもある大きな石像の地蔵菩薩様です。お姿がとても愛らしく、子授け・安産のお寺として、よくお参りいただきます。
そして観音様。小さい頃は観音様の前で寝ていたほど身近な存在でしたが、修行してから目線が変わりました。観音様は1300年もの間、何を見てこられたのだろう、どう思っておられるのだろうと、日々考えます。
また観音様は自分を写す鏡だとも思います。どんなお顔に見えるか、ぜひご自身と向き合う場としていただきたいです。
この聖林寺に生まれ育ったことに感謝し、今後はゆりかごから墓場までのごとく、生涯皆様に寄り添っていけるお寺となるよう、努力していきます。
聖林寺の年中行事
●除夜の鐘(全員) /12月31日 23時~翌1時
※国宝十一面観音菩薩様の新観音堂参拝無料
●秘仏宝蔵展、弁財天開扉/1月1日~3日 9時~16時30分
●春彼岸/3月春分の日
●本尊会式/8月24日 10時
●秋彼岸/9月秋分の日
(すべて経木塔婆3,000円、予定が変更になることがあります)
●写経の会/毎月18日 午後2時〜4時
(ただし1月、7月、8月、11月、12月を除く)
※3日前までに要予約
●ヨガ教室/毎月第1・第3木曜日 10時30分〜12時
1,800円(ハーブティー付き)
※3日前までに要予約
1,800円(ハーブティー付き)
※3日前までに要予約
●御影供(大師講・非公開)/毎月21日
◆安産祈祷、子授け祈祷、御礼参り、お宮参り、七五三〈すべてご祈祷は予約制〉
詳細は、聖林寺HPを確認ください
聞き手:朝廣佳子