増える慢性便秘症と炎症性腸疾患
苦痛のない検査で的確な診断と早期治療!
食生活の欧米化に伴い、日本人の腸内環境が変化している。日本人に最も多いガンが大腸ガンという報告とともに他の大腸疾患も増加の一途という。西の京病院の消化器内科外来でも「慢性便秘症」と難病の「潰瘍性大腸炎」患者が増加中。その診断と最新の薬物療法について、胃腸粘膜のプロフェッショナル、消化器内視鏡センター長・塩谷淳医師に伺った。
慢性便秘症
刺激性下剤に警鐘!!
日本では市販の下剤が簡単に手に入り、クリニックや病院でも乱用気味。腸の動きを活発化することで速やかに排便を促す刺激性下剤は、スッキリ感を得やすいが、長期に服用すると耐性ができてしまう。薬に依存するようになり、徐々に量を増やさなければならなくなり、自己排便力が薄れていく。怖いのは、大腸粘膜が黒く変色し、大腸ポリープ発生の危険性も危惧されることだ。
最新の薬物療法登場♪
近年、日本消化器病学会で慢性便秘症のガイドラインが作られ、この刺激性下剤の乱用に警鐘が鳴らされている。たかが便秘と楽観視し、病院での受診なしに健康食品や漢方薬、市販薬を常用するケースが多く、「出ない→薬→腸が排便を忘れる(出ない)→薬」の連鎖で、多量の刺激性下剤の服用に至っている人が多い。
「腸が自己排便の力を失い、薬に頼らざるを得なくなる。一種の麻薬だ!」とセンター長の塩谷先生。
ここ数年の間に、慢性便秘症に対する長期連用しても耐性を生ずることのない多種多様な薬剤が登場!「上皮機能変容薬」と呼ばれるものや、大腸内視鏡検査時のみに使用されていた「浸透圧下剤」が保険適用となった。
塩谷先生「改善には繊維質の多い食品摂取と運動が一番!市販薬に頼りきっていて心配な方は、ご相談を!腸の機能を保ったまま、便秘の改善に向かいましょう」
潰瘍性大腸炎(国の難病指定)
潰瘍性大腸炎は、慢性的に下痢や血便、腹痛を起こす病気で、季節の変わり目や環境の変化、ストレスなどで病状が悪化する。20歳代が発症ピークだが、10代〜70代まで患者はおり、年々増加傾向(グラフⅠ)。根本原因は不明だが、大腸粘膜の免疫異常とされ、完治せず、寛解と再燃を繰り返す病気で国の難病指定を受けている。重症になると手術で大腸全摘となるケースもある。
薬剤・治療の進歩
問題は、慢性病のため、調子がいいときも悪いときも薬剤を飲み続けなければならないこと。だが、この10年で目覚ましい躍進を遂げ、1日3回服用の薬が1回で済むようになり、腸の中に多量の液体を入れていた治療薬も、少量の泡や座薬になった。また中等症〜重症の患者の腸の免疫異常に働きかける有効な薬剤が多数保険適応になり、重症者の入院期間短縮や、手術不要の患者も増えてきた。
痛くない内視鏡検査
大腸疾患の正確な診断と適切な治療に必要なのが内視鏡検査。過去に苦痛を経験し(または経験した人の話を聞いて)、敬遠されることが多いが、同院では、経験豊富な日本消化器内視鏡専門医が、最新鋭のハイビジョンカメラを用いた鎮静下(麻酔)検査で、患者に負担をかけずに高精度な検査を行っている。
私は、滋賀医科大学で潰瘍性大腸炎の研究で博士号を取得(2009年)し、2015年まで同大でその診療に携わってきました。
最近の治療の進歩には感慨深いものがあります。困っている方々にこの恩恵をぜひ受けていただきたいです(塩谷)。
消化器内視鏡センター長
塩谷 淳(しおや まこと)医師(右)
日本消化器内視鏡指導医
消化器内科 医長
松木信之(まつき のぶゆき)医師
日本消化器内視鏡専門医
問い合わせ/TEL.0742-35-2219(患者支援センター)
取材協力/医療法人康仁会 西の京病院(メディカルプラザ薬師西の京事務局/奈良市六条町102-1)
https://www.nishinokyo.or.jp/
*yomiっこ2019年3月号に掲載の情報です