若いお坊さんへのリレーインタビュー
「Boze数珠つなぎ」
#260
Profile
融通念佛宗 大念寺 副住職
関本 和弘 師
せきもと わこう
1976年寝屋川市生まれ。48歳
12歳で得度。22歳で加行を終えて僧侶に。
融通念佛宗布教師会理事、寝屋川地区保護司、
自死に向き合う関西僧侶の会元代表、現事務局長
「Ｈ１法話グランプリ2021」グランプリ受賞
12歳で得度。22歳で加行を終えて僧侶に。
融通念佛宗布教師会理事、寝屋川地区保護司、
自死に向き合う関西僧侶の会元代表、現事務局長
「Ｈ１法話グランプリ2021」グランプリ受賞
「話す」と「聴く」の
二刀流を目指します
寝屋川市の融通念佛宗、大念寺の副住職をしております。奈良にご縁といえば、2021年になら100年会館で開催された「Ｈ１法話グランプリ」でグランプリを受賞させていただきました。また大学は奈良にある近畿大学農学部に通っておりました。そんなご縁でｙｏｍｉっこに登場しております。
法話グランプリは、宗派や地域を超えた45歳以下の若手僧侶らが約10分の法話を披露する場で、2年に1度行われます。審査でファイナリストに選ばれた8人が最後にステージ上で法話を披露し、審査員と会場の人たちが「もう一度、会いたい！」と思ったお坊さんに一票を投じます。その合計得点で優勝者が決まるのです。
私が出場した年のファイナリストの方々は、日蓮宗、浄土宗、高野山真言宗、華厳宗、浄土真宗、天台宗、臨済宗と様々な宗派からの8人で、皆さんとても心に残るお話をされました。
私はというと、いつも月参りに行くあるお宅の仏壇の花が枯れていた話から始まり、花の根っこというのはご先祖様みたいなものではないかと。日頃感謝の気持ちを忘れがちですが、見えないけれど支えてくださるご先祖様への敬いと感謝の気持ちが大事であり、こうして仏様に手を合わせる場所が家の中にあると、それを見て育つ子どもたちにも目に見えないものへのお陰様の心が養われていくといった話をさせていただきました。
まさかグランプリをいただくなんてびっくりでした。というのも、私は本当に法話が苦手だったからです。
私はお寺の生まれではありますが、高校はキリスト教系、大学は近大の農学部水産学科、さらに大学院はＩＴ系と、お寺にはまったく無縁の道を進みました。融通念佛宗の場合、僧侶になるのに最短10年かかるので、僧侶の資格だけは取っておかせようという親心でしょうか。学校の夏休みや冬休みの間に本山の大念佛寺に行かされていました。ですが、私自身お寺のことは仕事の定年後からと思っていました。
ところが住職だった祖父が脳梗塞で倒れ、父は仕事をまだ辞められないとなり、就職内定をいただいていた段階で、急遽お寺に戻ることになりました。
にわか僧侶になったものの、法話どころかお経の意味もわからない、何とかせねばと布教師になるべく本山に修行に通いました。布教師は融通念佛宗の教えを様々な場所で法話する資格を持った僧侶のことで、普通なら3年ぐらいで取れるのになんと10年以上かかってしまいました。
その間、何もしなかったわけではありません。薬師寺の大谷徹奘さんとインドツアーにも引率で行きました。徹奘さんはバス1号車、私はいきなり2号車を任され、どうすれば人を引きつける話ができるのか、必死で考えチャレンジしました。その時徹奘さんに言われました。「関本君、聖というのは耳に口に王と書くやろ。しゃべるのも大事やけど耳、つまり聴くのも大事やで」と。
そんな時、自殺防止センターの相談員募集の記事を見つけ、入ってみたのです。ここで傾聴を叩き込まれました。
傾聴とは相手の話を遮ることなくじっくりと聴くことです。つい口を出したくなるのですが、相談者の話をじっと真剣に聴き続ける、これがとても難しいのです。相談員は10年続けました。
やっている途中で、子どもの自殺者数が減らないことに気づきました。子どもにもっとアプローチする方法がないかを考え、そこから保護司になりました。罪を犯した少年らが保護観察になったときにいろいろと面倒を見ます。
相談員になった頃、それと並行してさらに僧侶として何かもっとできることがないのかと考え、2009年、「自死に向き合う関西僧侶の会」を立ち上げました。自殺された方の葬儀というのは遺族にとっても心の負担が大きく、きちんと「悲しむ」ことができる場ではないことや、僧侶にとっても葬儀の場で遺族に言葉をかけにくかったりする、ならば自死された方だけの追悼法要の場を設けようと思ったのです。第1回は本山大念佛寺でさせていただき、翌年から四天王寺で毎年12月に行っています。昨年12月は全国から僧侶が45人、自死遺族の方が75人お越しくださいました。法要も超宗派ならではの宗派を考慮した独特の形で行います。
自死遺族の方々から「救われました」とのお声を聴き、儀式の持つ力を思い知りました。今はこれらの活動を深めたい思いとともに、僧侶がもっと身近な存在になってほしくて、インターネットサイトの『僧侶クリニック』と『Hey！ Bouz』に登録し、相談を受けたり要望に応えたりしています。皆様も一度のぞいてみてください。
聞き手：朝廣佳子
