メディカル最前線vol.60 健康長寿の秘訣は司令塔「腎臓」にあり

【腎不全外来 】再生不能な沈黙の臓器

現代の〝国民病〟といわれるほど増加傾向にある慢性腎臓病(CKD)。自覚症状が現れにくく、進行すると合併症を招くなど命にかかわる怖い病気だ。〝早期発見・早期治療で健康寿命を延ばそう〟と、専門医を中心にケアチームが一丸となって患者のサポートに当たっている西の京病院「腎不全外来」の樋口敦医師に話を伺った。

樋口 敦 医師/HIGUCHI ATSUSHI

「加齢とともに腎臓も疲れてきてGFRも下がりますが、超高齢化社会で先は長いのです。齢のせいにせず、尿蛋白が出たりGFRが45を切ったりしたら専門医を受診しましょう。ステージが進む前ならそれを緩やかにしたり、治療法を選択したりできます」
先生の健康法
できるだけよく寝てバランスのいい食事に努め、軽運動(ジョギング)を心がけています。

■腎臓とその働き

腎臓は背中の腰あたりに左右1個ずつある握りこぶし大の臓器。非常に細い毛細血管が糸を束ねたような糸球体(フィルター)を形成しており、その数は約200万個。

腎臓の主な役割は、血液をろ過して老廃物尿として排泄すること。

その糸球体が傷むと大切な赤血球や蛋白たんぱく質が尿中に漏れ出し、尿潜血尿蛋白として観察される。

また糸球体潰れて数が減ると、ろ過できる血液量が減り、老廃物の排泄ができなくなり、血中溜まるようになる。

■腎不全とは

GFR値60以下は要注意!

文字通り腎臓機能の低下をいい、大きく急性腎不全と慢性腎不全に分けられる。今回は長い年月をかけて徐々に進行し、腎臓のろ過機能が低下していく慢性腎不全について伺った。

腎不全の障害度は、血液検査の結果などで目にするeGFR(推定糸球体ろ過量)を指標としており、GFR(糸球体ろ過量)毎分60㎖がボーダーラインとのこと。60を切ると徐々にステージが進むので、悪化を防ぐ治療が必要となる。

45を切ると中等度以上の腎機能障害、15以下になると透析の導入腎移植の準備が必要となる。病状やライフスタイルに合わせた腎代替療法を選択されるが、前記のように再生不能なので、一旦障害されると改善することはなく、進行を抑制するために一生その治療が続く。

ちなみに透析には血液透析腹膜透析があり、標準的な血液透析の場合で1日4時間を週3日、生涯続けることになるそうだ。

■〝黙して語らず〟の臓器

症状が出てからでは遅い

命に関わる働きをする臓器なのに、30を切るまでは無症状か軽度の自覚症状で、それ以上進行すると徐々に尿毒症やむくみなどの症状が出るという。故に60未満になった頃から経過観察が大切になるわけだ。

近年は腎臓病の治療薬も増え、早期ならGFRの低下を緩やかにできるようになったので、がんなどと同じように早期発見・早期治療が何より重要だという。

ストップ!慢性腎臓病

■予防―生活習慣の見直し

腎臓を長持ちさせるには、糖尿病の予防血圧管理が大切。生活習慣を見直し、必要な量をバランスよく食べ、塩分の取り過ぎに注意し、無理なく楽しめる運動の継続を肝に命じよう。

チーム連携でサポート

西の京病院 透析センター

162床 約400人の患者は奈良県最大級!
●本院透析センター65床 ●プラザ透析センター38床 ●プラザ第2透析センター34床
●西大寺クリニック透析センター25床 ※希望者には送迎サービスあり

腎不全外来

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■取材協力/医療法人康仁会 西の京病院 奈良市六条町102-1/
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