
先日、ある会社の会長さんが亡くなられたお別れの会があった。そこで驚いたのが、AI技術を使ったビデオレター。会場の出口のモニターに亡くなられた会長が映し出され、「本日はお越しいただき、ありがとうございました。生前、皆様と共に人生を歩み過ごせたことを心から感謝申し上げます」と挨拶された。AIによるご挨拶とあったが、本当に会長がご挨拶されているようにまったく遜色なくてびっくりした。
後で伺うと、生前の会長の挨拶動画などをAIに何本も読み込ませて作ったのだという。そうした動画をたくさん読み込ませるごとに本物に近づいていくそうだ。
おそらく金額も相当かかるのだろうなと思いつつ、これができるなら、愛する人(例えば配偶者や子ども、親など)を亡くした人が、言ってほしい言葉をAIに読み込ませてメッセージを作れば、喪失感や孤独感、悲しみや絶望から少しは救われるのではないだろうか。
亡くなられた方の、例えばLINEやフェイスブックといったSNSの本人のアカウントがその後も解約されずに残されていることがある。亡くなられてずいぶん経つのでご家族が意図的に置いているのかもしれない。
『ミカコ72歳』という漫画がある。これは72歳のミカコさんが夫を亡くし、亡くなって1か月後に孫に教えてもらったLINEで、まだ削除されていない夫のアカウントを見つけてつながるというストーリー。ミカコさんはその時から毎日亡き夫にせっせとその日の出来事や思ったことを送るようになった。
「その日にこんなことがあったよって、話すだけで心地いいんよ」と孫に話すミカコさん。返事もないのに死んだ人に話しかけてるなんてと心配する孫に「墓へ参ったら仏さんにいろいろ報告するでしょう。代わりに家で墓参りしとるだけよ」と答える。話したい時話しかける。
その姿がほほえましい。遺族が救われるのならデジタル技術も悪くない。
その姿がほほえましい。遺族が救われるのならデジタル技術も悪くない。
よみっこ編集長 朝廣 佳子