編集長のメッセージ(10月)

パリでの華やかなオリンピック、パラリンピックも幕を閉じた。今回のオリンピックは自国開催外で行われたオリンピックとしては、最高のメダル数だった。さらに、観ている我々があきらめそうになるのに、選手たちの決してあきらめない強い気持ちが勝ちを引き寄せる場面を何度も見せてもらった。 あの場に立つためにすべてを犠牲にしてひたすらトレーニングを続け、メンタルを鍛え、我々に最高の感動を与えてくれた選手の皆様に改めて心から感謝の拍手を送りたい。

オリンピックに引き続いてのパラリンピックはまた別の感情が湧き起こる。人間としての限界に挑戦、逆境に立ち向かうひたむきな姿に何度も心を打たれた。
その中で、日本の選手団にはいない人たち。毎回少なからず出場している戦争で負傷した兵士たちだ。アフガニスタンやイラク戦争、今回のパリ大会には、ロシアとの戦争で左足を失ったウクライナの選手、ガザで負傷した選手たちが出場していた。
元々パラリンピックの原点は、第二次世界大戦後の1948年、イギリスのストークマンデビル病院で行われたアーチェリー大会だそうだ。
戦争で負傷した多くの兵士たちのリハビリのために行われたとのことで、そのときの医師が言った言葉が「失ったものを数えるな。残されたものを最大限に生かせ」という言葉。どんな思いで選手がその障害を乗り越えてきたのか、想像を絶するものがある。今年のパラリンピックのアーチェリーの決勝で、両腕がなく足で見事に弓をひき金メダルになったアメリカのスタッツマン選手はその原点を彷彿とさせた。
今もなお戦争は終わることなく、多くの市民が犠牲になっている。平和の祭典で、傷痍しょうい軍人の選手がいない日が来ることを願う。

よみっこ編集長 朝廣 佳子

戻る