編集長のメッセージ(7月)

コロナ以降、加速した一つが家族葬だ。参列することも少なくなってきた中、仕事関係でお世話になった方が亡くなられ、葬儀のご案内をいただき参列した。今回仏式だったのだが、いつものお葬式とは少し違った。

その方はある大手の会社の事業部長として会社を大きく発展させた立役者だったが、ガンに冒され第一線から退いた。最期の2年間は舌ガンで声も出せず、つらい闘病生活だったと思うが、奥様は「どんな時も生きることに前向きで、好きなお酒とゴルフはやめなかった」と話されていた。
こじんまりとはしていたが、家族や親せきと会社関係の人、親しかった人たちによるお葬式。入り口には本人愛用のゴルフクラブや家族との写真が飾られ、開式の前には本人の生まれた時からの生涯が映像で紹介されてから読経に入った。
最後は彼が大好きだったエグザイルの「道」がピアノの生演奏で流れた。その歌をよく聞かされた部下たちはすすり泣いていた。
また出棺前に20分ほど準備の時間があり、ご遺族が参列者らとそれぞれに話をする場があった。
最期のお話を伺ったり生前お世話になった御礼をお伝えしたりした。「仕事のことは全然知らなかったのでそんなことがあったのですね」と奥様がしみじみと仰った。家族にとっては知らない本人の生前の姿を知る場になったのではと思う。その方の人生を改めて参列者皆で共有し、穏やかにお見送りできたいいお葬式だった。
家族葬が悪いということではなく、ネットを見れば「安く済ませる」という言葉ばかりが先行しているのが気になる。値段の問題ではなく形の問題だろう。最期のお別れをきちんとするということが、だんだん希薄になっていくように感じる。自分ならどう見送り見送られたいか、考えさせられる機会であった。

よみっこ編集長 朝廣 佳子

戻る