2022.9.1 にっしー Narakkoスタッフおすすめのお散歩コースをご紹介♪ 重要伝統的建造物群保存地区の橿原市今井町を歩いていると、辻々にお地蔵さんの祠を見かける。その数なんと約20。昔から地元住民が協力して守ってきた。また最近は「本」が読めるカフェが増えており、子どもから高齢者までが気軽に交流できるスポットとして注目。そんな今井町で、お地蔵さんとブックカフェのぶらり旅。 メイン画像:今井町を見守ってきた樹齢四百数十年の「蘇武橋のエノキ」(橿原市景観重要樹木 第1号指定) ルートをPDFで見る 【目次】 ❶ 自家焙煎 珈琲の富田屋 ❷ うのまち珈琲店 ❸ イノンドカフェ ❹ コミュニティ&ブックカフェ 今井文庫 ❺ クール・ルポ START 近鉄大和八木駅 案内人 阪本日出雄さん (奈良まちなみ文化塾 塾長) 長らく今井町の講を観察中 今井町には、地蔵講以外にも、春日講、伊勢講(日待ち講)、弁天講、行者講、恵比寿講といった講文化が今も根付いています。 どうしてこんなにお地蔵さんが多い? 今井町の環濠内に悪霊が入るのを防ぐ神として、村の境界や門の付近にお地蔵さんを配したのが起源とされる(最古の記録では、嘉永3年(1850)に地蔵講を再開したという記述あり)。昭和30年代まではこれほど多くはなかったが、子どもの数が増えたことで、お地蔵さんの数(地蔵講)も現在の数まで増えたと考えられる(阪本さん談)。 お地蔵(地蔵菩薩)さんとは? 地蔵菩薩は、釈迦が入滅してから、弥勒菩薩が現れるまでの56億7千万年もの間、大地のように広大な慈悲の心で、あらゆる人々を苦しみから救ってくれる存在。特に子どもを守る神として信仰されてきた。 今井町のいろんなお地蔵さん まちなかには20か所ほどの祠がある。お地蔵さんのご利益として多いのが、安産や子どもの健康を願う「子安地蔵」や長寿を願う「延命(運命)地蔵」。ほかにも「水難防止」「火災予防」「交通安全」など様々だ。 地蔵盆の時の様子 新平地蔵(大工町) 江戸時代、町内の名士で近所の子どもをかわいがっていた新平さん(上田新平)を偲び、延命地蔵と新平地蔵を旧新平屋敷の地蔵堂に安置したのが始まりと伝わる。 井上地蔵(材木町) 皇太神宮(大神宮さん)、愛宕神社、庚申さんと並んで祀られている。ご利益は「赤ちゃんの夜泣き止め」 聖徳太子が水を飲んだ、愛馬黒駒の足を洗ったと伝わる井戸「蘇武之井」 川中地蔵(蘇武町) 元々川と堀に挟まれた場所にあったため川中地蔵と呼ばれる。御利益は「水難防止」。井戸のそばに設置されている。 地蔵講とは お地蔵さんは、近所の住民が数軒から数十軒単位で「地蔵講」というグループを組んで世話をしている。その当番の家は「とや(当屋・頭屋)」と呼ばれる。 ※今井町の中には、地蔵講が存在しない町内もある(理由は不明) 地蔵盆・地蔵まつり 毎年7月23・24日に開催。祠の上にテントを張って、提灯を飾り、お地蔵さんに花、果物、菓子を供え、僧侶にお経を唱えてもらう。また地蔵講の中には、祠ではなく、当屋で世話するお地蔵さんもあり、年に一度、地蔵盆の日にだけ当屋の敷地内や室内で祀られる。 ユニークな供え物 ブックカフェをめぐろう♪ ❶ 自家焙煎 珈琲の富田屋 1855年築の旧音村家の蔵を改修し、今年7月に移転オープン。1Fは焙煎所、2Fは、昼寝・読書・自習など自由に使えるフリースペースとして開放中(入場料100円)。飲み物や食べ物の持ち込みOK(IH調理機、やかん完備)。本棚の本は、気に入れば自分のモノにしても大丈夫。 昔の柱に残っていた字 (今井…と読める) 店主・洲脇大輔さんオススメ本 地宝論/田中優 著 環境活動家の著者が、地方の生産者や団体の知恵を紹介しながら、食糧、エネルギー、お金もすべて「地産地消」で再生できると社会提言した一冊です。 珈琲の富田屋 住所: 橿原市今井町1-10-17MAP TEL: 0744-22-6530 営業時間: 10:00〜19:00 定休日: 土・日曜、祝日 駐車場: なし 「 珈琲の富田屋」の詳細情報を見る ❷ うのまち珈琲店 若者に人気のブックカフェ。店内の本は自由に読むことができる。印象に残った本のページには、店オリジナルの「しおり」に感想を書きこんで、挟んじゃおう。 アイスコーヒー&トマトチーズトーストのセット オリジナルしおり 読んだ本 星新一の短編集「地球から来た男」 死神からあと50日で死ぬと告げられた主人公が、ついに最終日を迎えるという『あと五十日』。読んだ後の爽快さ、生きる希望が湧くストーリーでした。 うのまち珈琲店 奈良 住所: 橿原市今井町4-3-6MAP TEL: 0744-41-6645 営業時間: 11:00~19:00(LO17:00) 定休日: 不定休 駐車場: 今井まちなみ広場駐車場(有料)を利用 「 うのまち珈琲店」の詳細情報を見る カラフルな色でテンションUP↑奈良のクリームソーダ9選 ❸ イノンドカフェ 地元住民に愛される古民家カフェ。お茶しながら店主セレクトの本をパラパラ、常連のお客さんとの世間話でほっこり。ギター教室やコンサート・個展も開催(詳細はインスタ)。夏場はアイスコーヒーとカレーもおすすめ。 (左)今井町の文化歴史を研究されている山田盛さん(地蔵盆のことも詳しく教えてくださいました)。(中)長年指物師として、今井町の多くの建具・家具を手がけておられる當麻龍二さん。(右)店主の井上典子さん カスタードプリン350円 店主・井上さんオススメ本 絵描き遍路をやってみた /イマイカツミ 画家イマイカツミさんが野宿しながら四国八十八ヶ所を、ひと寺1時間で描いて回ったエッセイ。淡く繊細な風景画に癒やされます。 イノンドカフェ 住所: 橿原市今井町4-10-12MAP TEL: 070-1777-4996 営業時間: 11:30〜17:00(LO) 定休日: 不定休(インスタで告知) 駐車場: 近隣に有料Pあり 「 イノンドカフェ」の詳細情報を見る ❹ コミュニティ&ブックカフェ 今井文庫 店主の上田琢也さんは、県内の社会福祉法人に長年勤める傍ら、地元の有志と今井町の空き家活性化プロジェクトのNPOにも携わってきた人物。これまでの経験を生かして、あらゆる人が気軽に交流できる「第3の居場所=サードプレイス」として、今年4月にブックカフェを開業した。委託販売の焼き菓子も揃える。1冊100円〜の古本コーナーも。 レモンを効かせた季節の紫蘇ソーダ450円 全国のユニーク木簡を薄い板にプリントした「木簡しおり」 500円 米谷家住宅を忠実に再現した 「ペーパー模型キット」 1,200円 店主・上田さんオススメ本 家をつくる 今井町のみんか/島田 アツヒト 著 今井町のまちづくりの過程が、わかりやすく説明された絵本です。 【店舗情報】 住所:橿原市今井町3-2-32 営業時間:10:30~17:30 定休日:日・月曜 ❺ クール・ルポ 東京から移住した上野夫妻のカフェ。フランス料理学校「コルドンブルー」で学び、料理教室を主宰してきた奥さんが、奈良の食材を使ったランチ、パン、ケーキを提供する。クール・ルポとは、フランス語で「ひとやすみ」のこと。 梅ジャムのアーモンドケーキ500円/無添加の自家製ケーキ。 知り合いの梅農家さんで収穫した 梅を使ったジャムがたっぷり ご主人の上野潤氏は建築士なので今井町の町家に関する資料も置いている。ちなみに❶富田屋も設計。 ©鉄秀 tesshu 上野夫妻オススメ本 ブリューゲル関連本 ご主人が約30年前から大好きなブリューゲル。コツコツと収集してきた書籍、資料。 ★夏季休業中/9月中旬から再開予定(インスタ・電話で確認を) 【店舗情報】 住所:橿原市今井町2-8-12 営業時間:11:30~17:00 定休日:火〜金曜 @cafe_courtrepos GOAL 近鉄大和八木駅 【旅を終えて】 住民が主体となって守り伝えてきた地蔵講。そこにはお地蔵さんを通じて、昔から脈々と受け継がれ、地域住民が一つになる尊い姿がありました。ブックカフェには、地元の人も外の人も気軽に交流できる「第3の居場所」がありました。取材にあたりご協力いただきました皆さまに心から感謝申し上げます。