〈奈良市〉徳融寺で「おとなの寺子屋」開催 2023.9.5 やーさん お坊さん監督による映画『肩をよせあって』上映 奈良市鳴川町(ならまち)にある融通念仏宗・徳融寺(阿波谷俊一住職)で、2023年9月2日、「おとなの寺子屋」が開催されました。 江戸時代、地域の子どもたちに読み書き・そろばんを教えた寺子屋ですが、大人の学び処として、同寺老院の阿波谷俊宏師が、平成15年(2003年)から隔月で開いている私塾です。講師には、奈良を中心に各界の造詣深い人々を招いて、主に奈良にまつわることをわかりやすく話していただくという趣向です。 当日は、奈良在住のお坊さん監督・横田丈実氏を招き、最新作の上映と法話でした。 斑鳩の浄念寺住職兼映画監督の横田丈実氏の最新作『肩をよせあって』 横田丈実氏は、斑鳩の地は法隆寺北東の小高い丘の上にある浄念寺(融通念仏宗)の住職であり映画監督です。その17本目の作品『肩をよせあって』を、本堂(奈良県指定有形文化財)の本尊・阿弥陀如来様を前に、約40人の“寺子屋生”が鑑賞しました。 のどかな「いかるがの里」で共に暮らした人たちの物語 映画『肩をよせあって』は1999年、浄念寺隣にテントを建て、お寺の周辺に住む仲良き20人の村人を招いて行った映画上映会。20年がたった2019年、横田氏はあの時テントに集まった当時平均年齢約70歳だった人々のその後を訪ね歩いて、フィルムに収めました。 すでに亡くなられた人、まだ元気な人もいらっしゃいました。小さな町で、肩を寄せ合い、助け合って仲良く暮らす人たち。〝ともに生きて、ともに亡くなっていく〟人たちの物語が、監督自身のナレーションとともに紡がれていくドキュメンタリーです。 人の「生死の物語」なのに不思議な安らぎも まずは4人の方々を対象とし、亡くなった方についてはその家族が思い出を語ります。「家族を亡くすのはつらいことだけれども、心の中で生きていて、決して離れ離れではないのですね」と横田氏。 横田氏自身の父親も上映会に参加した一人。撮影時は入院中で、結果的には臨終、葬儀も映画に組み込まれていきます。 人の生死を扱った内容なのに、ちっとも暗くなく、映画に出てくるおっちゃん、おばちゃんたちや、残された家族の思い出話で生き返ったおじいちゃん、兄弟以上の関係だと故人をしのぶ80代後半の男性たちの素朴で生の重みの感じられる表情や語りが、観る人に不思議な安らぎを与えてくれます。 本堂の外では蝉の鳴き声が聞こえていましたが、それすら耳に入らない内容の作品に、身を乗り出すようにして見入る人も多く、しわぶき一つ聞こえない52分でした。 共生と共死―人は共に生き、共に死するー 徳融寺本堂でこの時間を共に生きた40人 上映後、横田氏は「セミが鳴くこの暑い時期に、この徳融寺に集い、出会い、共に肩を合わせてこの映画を見る、この瞬間が貴重なのです。共に生きるということではないでしょうか」と話し、皆さん深くうなずいておられました。 老院は「横田監督のお父さんは私の先輩でして…」と懐かし気に、かつてのエピソードも話されました。最後に、次回は11月4日「奇豪吉村長慶の生涯 石仏見て歩き」で、講師は奈良まほろばソムリエ会員であり奈良テレビ準レギュラーの友松洋之子氏との告知がありました。吉村長慶は同寺の檀家でもあり、境内には氏の寄進した本人像のほか、氏の思いを表現した石造物も建っています。 「おとなの寺子屋」では、奈良を深掘りした興味深い話が聞けるとあって、毎回友人を誘って訪れているという女性は、帰りがけに長慶氏由来の石造物に友人を案内、「こちらの老院さんは、博識の学僧さんでネットワークも広く、毎回貴重な話が聞けます」と話されていました。 【『肩を寄せあって』上映の案内】11月23日(木・祝)①11:00~ ②13:30~会場:いかるがホール 小ホール(生駒郡斑鳩町興留10-6-43)¥1,000円(当日券のみ、事前予約不要)https://katawoyoseatte.com問い合わせ TEL:0745-75-3000(横田) 【おとなの寺子屋】奇数月第1土曜日14:00~16:00頃次回は11月4日「奇豪吉村長慶の生涯 石仏見て歩き」講師:奈良まほろばソムリエ会員奈良テレビ準レギュラー 友松洋之子氏¥:300円(1回/テキスト代)