11月21日[木]

〈奈良のスター〉東大寺の大仏を造った『行基さん』波乱万丈の生涯

668-749年 奈良時代の僧『行基』

近鉄奈良駅前の噴水に立つ僧侶の像。彼が今回紹介する「行基菩薩」です。行基の像は、彼が建立に関わった「東大寺の大仏」の方向を向き、今も見守っているかのよう…。

弱者の味方・行基菩薩

行基は百済系渡来人の子孫で、668年に河内国大鳥郡(現在の大阪府堺市)に生まれました。682年に出家し、法相宗などの教学を学んだとされています。704年に生家を家原寺とし、弟子を率いて布教と貧民の救済や治水、架橋などの社会事業に熱心に取り組みました。そして、710年の平城遷都の頃は、過酷な労働からの逃亡・流浪する民が増え、これら逃亡民のうち多くが行基の下に集まり私度僧(官許を受けることなく出家した僧尼)になり、その活動を支えたとされています。

人々から行基菩薩と崇められるほどの支持を集めましたが、時の政府からは民衆を扇動する危険人物とされ、ついには僧尼令に違反するとし717年に布教を禁圧されてしまいました。

弾圧から大僧正へ

糾弾を受けた行基でしたが、豪族や民衆を中心に影響力は衰えず、その活動と名声は各地に広まりました。政府も次第に行基を認めるようになり、その技術力や農民動員の力を利用して河内国の狭山下池を築造。行基は各地で社会事業を行い、寺院を建立しました。

社会的信望を集めた行基は741年に聖武天皇と会見。743年には東大寺の大仏造営の勧進役に起用され、多大な功績を収めて745年に朝廷から日本初となる大僧正の位を贈られました。しかし、大仏の完成を見ることなく、749年に82歳で亡くなりました。この82年の生涯の間に、畿内49か寺の寺院を建立したと伝わります。

行基誕生1355年記念「行基さん大感謝祭2023」開催!

2023年11月12日(日)に春日大社境内飛火野にて行基さん大感謝祭が行われます!(12時〜16時 ※雨天決行/荒天中止)

【イベント】お砂踏み体験/行基霊場参詣
全国各所より50以上の寺院が一堂に集まり、各寺院境内のお砂で1日だけのお砂踏み道場が設置されます。

【イベント】棟梁直伝/宮大工教室(参加無料) 行基さんの時代から受け継がれる伝統的な土木技術をもつ宮大工による体験教室。
その他、「どぼく体験教室」や「新しい鋳造リアル体験」、「たこあげ体験」「行基さん紙芝居」などイベント盛りだくさん!(いずれも参加無料)

行基ゆかりの寺「喜光寺」

奈良市にある喜光寺の本堂には行基が東大寺を造営する際に参考にしたとする伝承があります。そのため、この本堂は、「試みの大仏殿」と呼ばれ、重要文化財に指定されています。
喜光寺
  • 住所: 奈良市菅原町508MAP
  • TEL: 0742-45-4630
  • 拝観時間: 9:00~16:30(16:00最終受付)
    7月中の土日・祝日は7:00~16:30
  • 拝観料: 大人500円、子ども(小中生)300円
  • 駐車場: あり

近鉄奈良駅前の「行基像」

奈良の待ち合わせスポット(東京で言う渋谷のハチ公前ですね)として有名な行基像の噴水。1970年の駅前広場が完成した際に記念として建てられたこの行基像は、もともとは奈良の伝統工芸品である「赤膚焼」で造られていました。しかし、壊されることも多く、現在はブロンズ製の3代目が鎮座しています。(下の噴水部分の台座は赤膚焼です)

実はこの行基像…同時に3体作られていたんです!

残りの2体はそれぞれ行基さんゆかりのお寺に建てられており、近鉄奈良駅の初代行基像と同じ型でつくられた「クローン像」で赤膚焼で造られたもの。全て同じように東大寺の方向を向いています。

霊山寺の行基像

奈良県奈良市、天平8年に聖武天皇の勅願で行基が建立したとされる古刹。行基像は八体仏霊場の横に建てられています。
霊山寺
  • 住所: 奈良市中町3879MAP
  • TEL: 0742-45-0081
  • 拝観時間: 10:00~16:00(バラ園は8:00~17:00)
  • 休業日: 無休
  • 拝観料: 大人500円(600円)、小人250円(300円)※( )内は、バラの時期5・6月、10・11月の料金
  • 駐車場: あり

九品寺の行基像

奈良県御所市にある、奈良時代に行基が開創したと伝わる古刹です。本堂の裏手には千体地蔵と呼ばれる石仏群があり(正確には1,800体ほど)約200年前に境内の竹やぶを開墾した際に土中から発見されたものを現在の位置に並べたそうです。

行基像は、本堂向かって左側に建っています。

戒那山 宝池院 九品寺
  • 住所: 御所市楢原1188MAP
  • 駐車場: あり

行基図

行基が作ったとされる古式の日本地図。しかし、行基が作成したものは現存しておらず、実際に行基が作ったかどうかは不明です。この図が後世まで日本地図の原型として用いられました。

庶民のヒーロー行基「行基と仏の力 編」

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