2024.6.7 Narakko管理者 事業承継の選択肢として、M&Aが身近な存在に M&AとはMergers and Acquisitionsの略で「企業の合併・買収」、つまり会社が合併したり、他の会社を買ったりすること。 元々は、大企業がグローバル戦略で世界進出するにあたり、現地法人を次々と買収していくのが始まり。近年では、企業の事業承継(後継者へのバトンタッチ)の選択肢として、または事業拡大や多角化の手段として、中小・零細企業クラスにとっても身近な存在になっています。 奈良市に本社を置く「みらいM&A支援事務所※(運営会社:株式会社ユーザーサービス)」では、このM&Aに特化し、とりわけ中小・零細企業の円滑な事業譲渡やビジネスマッチングに関する支援を行っています。JR奈良駅西口から徒歩2分、2023年5月に開設した事務所を訪問し、代表者で中小企業診断士でもある分部昇さんにM&Aに関するインタビューを敢行しました。前編では、M&Aを取り巻く現況を中心に教えていただきました。※「みらいM&A支援事務所」は、2024年12月にこれまでの「中小企業M&A支援事務所」から名称変更されました。 JR奈良駅から徒歩2分 なぜ今、M&Aが注目されているのか? 現在、日本国内には約360万社の企業が存在しています。2023年には、そのうち15万3,405社が新規開業する一方で、5 万 9,105 件が休廃業もしくは解散し、8,497件が倒産しています。ちなみに奈良県の休廃業・解散数は 367件でした。 実は、これら休廃業・解散した企業のうち、直前期が「黒字」だった企業は、半数以上の 51.9%もあります。そして、休廃業した経営者の平均年齢は 70.9 歳でした。 データ出典:2023年帝国データバンク調べ この2つの数字から導かれるのは、後継者へ適切にバトンタッチできていない高齢経営者が、深刻な物価高と人手不足を背景に「事業を続けるか否か」の決断を迫られ、経営悪化する前にやむなく会社を畳んでしまう「あきらめ廃業」が、多分に含まれていること。そして休廃業した企業の従業員は、職を失うことになります。今後も成長の可能性があるのに、技術ノウハウや設備が途絶えてしまうのは残念であり、国の生産力低下も招きます。 そんな中、企業の休廃業・解散を救う手段として注目されているのがM&Aです。下のグラフに示す通り、ここ10年間でも、M&Aの成約件数は2倍以上に増加。全国の事業承継・引継ぎ支援センター(※)の相談件数もここ10年間で飛躍的に増えています。 加えて、人の価値観においても、昔なら自分の子どものように大事な会社を他人に売るなんてありえないという考えから、今は売ることを前提として会社を創業する時代になりました。若い起業家の間では、一つの事業モデルを生み出したらすぐに売却して次の新事業へという、スタートアップビジネスも人気です。まさに会社や事業が「商品」となりうる時代です。(※)事業承継・引継ぎ支援センター……事業を引き継ぎたい企業と譲り受けたい企業のマッチングを行う各都道府県に設置された公的な専門機関https://shoukei.smrj.go.jp/ M&Aは10年で、良いイメージに M&A<売る側と買う側>のメリットとは? M&Aには、大きく「事業譲渡」と「株式譲渡(法人譲渡)」の2種類がありますが、私たちが取り扱う中小・零細企業においては、事業譲渡が8割ほど占めます。 売る側(譲渡側)のメリットとしては、貴重な人材や技術などの資源を相手企業に引き継げる。従業員の雇用を守れる。廃業コストが抑えられる。ほかに創業者利益を得られるなどがあげられます。 買う側(譲受側)のメリットとしては、時間・ヒト・技術などの資源を短時間で得られること。取引網や事業の拡大と成長が見込めます。 <譲渡側のメリット> ・事業の継続・発展を見込める ・廃業コストを抑えられる ・創業者利益を得られる <買収側のメリット> ・取引網や店舗網拡大によるスケールメリットの確保 ・新規事業参入による事業の多角化と収益の安定化 ・既存事業の強化や技術力の向上 ・事業成長にかかる時間と労力の削減 なお買う側の注意点は、株式譲渡の場合、法人が負うべき法的責任(過去の負債やトラブル)もそのまま引き継ぐことに。よって雇用契約については、店舗や事務所単位であっても従業員とは新たに雇用契約を結び直すケースが多いです。 M&Aを取り扱う仲介業者について M&Aを取り扱っている仲介業者は、主に銀行・信用金庫・証券会社などの金融機関、コンサルティング会社(FA会社)、会計士・税理士・弁護士・行政書士・中小企業診断士などの士業などさまざまです。 実はM&Aの仲介業務に必要な国家資格はありません。誰でも取り扱えるため、サービスの質や力量は千差万別。そのような状況下なので、令和2年に中小企業庁が「中小M&A支援機関に係る登録制度」を新設し、仲介業者に一定の「基準」を求めるようになりました。登録会社は中小企業庁の定めるM&A業務のガイドライン遵守が義務化されています。もちろん当事務所も、運営法人のユーザーサービス名義で登録済みです。 民間においても、M&A業務に必要な知識やスキルのある人材を養成・認定する資格を各団体が用意しています。これらは業者を選ぶ上での基準となるでしょう。当事務所の専任コンサルタントは、中小企業の経営支援を行う国家資格中小企業診断士であり、M&A資格の最高峰ともされている「M&Aシニアエキスパート」の資格を取得しています。 <民間のM&A資格例>・M&Aシニアエキスパート(一般社団法人金融財政事情研究会)・M&Aスペシャリスト(一般社団法人日本経営管理協会)・JMAA認定M&Aアドバイザー(一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会)・事業承継士(一般社団法人事業承継協会) M&A支援機関登録制度のホームぺージ 当事務所もM&A支援機関に登録済 後編では、みらいM&A支援事務所設立までの歩み、特長などを語っていただきます。 後編を読む みらいM&A支援事務所のホームページへ 取材協力:みらいM&A支援事務所(株式会社ユーザーサービス)