〈奈良みやげ〉門外不出の伝統銘菓『きみごろも』淡雪のようなはかない口溶け(松月堂) 2023.9.1 やーさん 見た目は揚げ出し豆腐!?江戸時代頃からの古い町家が並ぶ「宇陀松山」で焼き上げられる銘菓 約5cm四方、厚み約3cm、見た目は揚げだし豆腐のような姿の菓子が全国に名を馳せる銘菓「きみごろも」です。宇陀市大宇陀の松山地区で100年続く老舗和菓子店「松月堂」で、明治時代から一子相伝で焼かれています。 黄身の衣に包まれたふわふわメレンゲ、淡雪のような口どけの銘菓 新鮮な卵の白身を泡立てたメレンゲに温めたハチミツと寒天を混ぜ、固まったところで切り分けて、一つひとつ丁寧に黄身の衣をまとわせて焼き上げていきます。 そっとちぎって口に含んだ瞬間、ほんのりとやさしい甘みが広がり、淡雪のようにはかなく溶けてしまう不思議な食感。食べた人に、“何とも言えない余韻”を残してくれるお菓子です。抹茶や緑茶、ほうじ茶などの日本茶にはもちろん、コーヒーや紅茶にも合い、夏は冷たくしてフルーツソースやアイスクリームを添えていただくのもまた良しです。 先々代が考案、伊勢や長谷詣での旅人へのもてなし菓子 飛鳥時代から「阿騎野(あきの)」と呼ばれ、宮廷の狩場だった大宇陀。戦国時代に「宇陀三将」と称された秋山氏が古城山に城を築き、その城下町として栄えたのが宇陀松山地区の始まりといわれています。 伊勢本街道と長谷街道を結ぶ交通の要衝であった松山町は、江戸時代には「宇陀千軒」「松山千軒」と呼ばれ、薬屋、酒屋、油屋、醤油屋、葛屋、菓子屋、宿屋など多くの商家や町家などが活況を呈しました。それら各時代の歴史と文化を今に伝える街並みは、2006年重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。 そのほぼ中央に位置するのが、松月堂。現三代目・堀井義之さんの祖父が、他の生菓子などと共に、伊勢や長谷詣での旅人へのもてなしや土産菓子として創案したそう。そのシンプルさ、上品な甘みと舌触りが見込まれて40年前に長谷寺御用達の菓子にもなりました。また、全国菓子博覧会では3度も金賞を受賞しています。 【MENU】 きみごろも(6個入)906円 きみごろも(10個入)1,700円 【購入できるところ】 松月堂本店(宇陀市大宇陀上1988) 奈良まほろば館 (東京新橋)※週一販売:概ね金曜 近鉄百貨店奈良店(大和路ショップ)※週一販売:概ね土曜 ※地方発送可(夏場はクール便) 四代目・五代目へと手作りで守る伝統の味 生菓子なので冬で3~4日、夏場は2日が賞味期限。手作りのため、量産もできません。そのため、どこにも卸すことなく店頭のみで販売を続けてきました。近年、宅配も行い、東京の「奈良まほろば館」でも販売され始めましたが、それも夏場はストップしています。 「この菓子の出来を握るのは、新鮮で元気な卵を使うこと。それと泡立てです。機械だけでは駄目で、家族で交代しながら時間をかけてきめ細かに泡立てます」と義之さん。門外不出の伝統の技が生む宇陀の銘菓は、家族の団結の力が生む結晶。三代目から四代目へと受け継がれながら、今日も食べた人の笑みを生んでいます。