〈奈良市〉“試みの大仏殿”が建つ行基ゆかりの『喜光寺』

行基菩薩の涅槃の寺、蓮の花と小さな大仏殿

養老5年(721)、菅原の里に住む寺史乙丸という人物から平城京右京三条三坊の土地を寄進された行基が創建した寺院。行基が建立した寺院の中で唯一平城京内にあり、布教活動や社会事業の重要な拠点寺院となっていました。

南大門[2010年]:創建当初のものは元亀年間の戦乱で焼失

創建当初は土地の名前から「菅原寺」と呼ばれていましたが、天平20年(748)に聖武天皇が同寺に行幸した際、ご本尊から不思議な光が放たれたことに天皇は喜び「歓喜の光の寺である」として『喜光寺』の名を下賜したといわれます。

本堂は行基が東大寺大仏殿に先立って建立したという伝承から「試みの大仏殿」と呼ばれていますが、奈良時代の本堂(金堂)は明応8年(1499)に焼失。

現在の本堂は天文13年(1544)に縮小して再建されたものですが、南側一間を吹き通しにする「南庇(なんぴ)」や「裳階(もこし)」など奈良時代を意識した建築技法が採用されています。

本堂[重文 室町時代]

創建当初の本尊は判然としていませんが、現在は丈六の阿弥陀如来坐像を本尊として祀っています。南北朝時代のものとされる勢至菩薩・観世音菩薩両坐像を脇に据え、壁面には音声菩薩が浮かぶなど、極楽へと衆生を迎える来迎のさまを表した空間となっています。

阿弥陀如来坐像[重文 平安時代]

喜光寺は“行基菩薩入寂の寺”としても知られます。行基は、天平21年(749)に病床に臥し、2月2日に同寺東南院にて82歳の生涯を終えました。

安らかな最期であったといわれ行基菩薩の略伝『大僧上舎利瓶記』には「右脇をして臥し、正念すること常の如し。奄(にわか)に右京菅原寺にて終る」と記されています。墓所は生駒市有里の竹林寺にあります。

平成26年(2014)に建立された行基堂には、平成10年(1998)の行基菩薩1250年御遠忌にあわせて造立した行基菩薩像が安置され、周囲には千躰地蔵が祀られています。

行基堂

また境内の弁天堂には鎌倉時代に叡尊が祀った人頭蛇身の秘仏「宇賀神像」が安置されています。同寺縁起には「福をもとめる者、応験夥おうけんおびただし」と記され、財運成就をはじめ、福徳を祈願する者は多くの霊験を賜るそうです。

弁天堂
宇賀神守 各500円

本坊にはお写経道場があり、平成4年(1992)の発願以来30年以上続く「いろは写経」をはじめ「ぬり絵いろは写経」など、子どもから大人まで気軽に書写体験ができます。写経を通して心を鍛え、仏様と縁を結んでみてはいかがでしょうか。

お写経道場
発願以来32年続く「いろは写経」
2,000円(拝観料含む)
基本情報 Basic Information
喜光寺/きこうじ
  • 住所: 奈良市菅原町508
  • 拝観時間: 9:00~16:30(16:00最終受付)
    7月中の土日・祝日は7:00~16:30
  • 拝観料: 大人500円、子ども(小中生)300円
  • 駐車場: あり
  • TEL: 0742-45-4630
  • HP: http://www.kikouji.com/
  • SNS:

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