2021.3.4 鮎 世界遺産「春日山原始林」の倒木を使って作家らがオブジェの展覧会 春日大社の神域として1000年以上守られてきた森、春日山原始林。その森で倒れた杉を使って作家たちがオブジェを制作。2月27日~3月7日の10日間、もちいどの商店街のBONCHIで、展覧会が開かれている。 森の坊、青葉“い”・“ろ”・“は”/堂本寛恵 樹齢600年の杉が倒れたのは2年前。旧柳生街道「滝坂の道」にある首切り地蔵のそばにあった高さ約32m、幹周り6mの大杉だ。その倒木を「春日山原始林を未来へつなぐ会」(以下 未来へつなぐ会)が譲り受け、イベント「奈良・町家の芸術祭 はならぁと」のコーディネートを行う(一社)はなまるに相談し、倒木とアートを結びつけることになった。 真ん中の輪は、倒木の直径を表したもの。現地でのワークショップ参加者が思い思いの木を削ってつなげた 7人の作家が現場に赴き、空気感も含めてデザイン 参加した作家は7人。未来へつなぐ会とともに生育していた現場に足を運び、山の様子を見学。昨夏から各々が制作を開始した。このたびお披露目となった作品は35作品。春日山の自然をオブジェで表現したもので、ムササビの照明やどんぐりで表した「春日どん」などユニークで温かい作品が揃っている。 ムササビの棲む森/大矢一成 誕生(奥)・水滴(手前)/たかはしなつき 侵食/木下栞 生える伸びるサル/矢野洋輔 同展覧会は3月7日まで、毎日10時~18時で開催。 会場には未来へつなぐ会のメンバーが常駐し、春日山についての話を聴くことができる。 春日山原始林を未来へつなぐ会事務局長のスギヤマタクジさん 「この木が倒れた時、ちょうど近くにいたんですよ。どーんって音がして、周りの木も巻き添えにして倒れていました。何かに呼ばれたかのような、このまま済ますのはどうかという気持ちになって、これを伝えていかないといけないという思いになったんです」 その後、春日山原始林をPRするのに使用するということで、県から譲り受けて、試行錯誤の末、たかはしなつきさんらをはじめとするアーティストの皆さんに委ねることに。その間も、音風景研究家の岩田茉莉江さんによるフィールドワークや、大杉をたたえるワークショップを倒木の場所で展開、自然とふれあう大切さを伝えてきた。スギヤマさんは、元々東京都出身。7年前に妻の実家の奈良に引っ越してきた。東京で環境の仕事をしていたことから、たまたま春日山を歩いてこんないいところがあるんだとびっくり。そこからのめり込み、デザイナーをしながら、この守る会の事務局長を務めている。 危機的な春日山の状況も含めて知ってほしい 今、春日山原始林は、鹿が下草や木の若芽を食べてしまうので、下草が育たず、雨が降ると土が流れてしまって粘土質がむき出しになっているところも多々ある。これにより、樹齢の長い木も弱ってしまうことから、奈良県や民間有志グループがなんとか森を維持する方策を検討中だ。「この木自身は山にはもうないけれど、こうして木が山から飛び出して皆さんの目に触れてもらえてうれしいです。このプロジェクトを機に、もっと春日山原始林のことを知ってもらえたら」とスギヤマさん。 開催情報 Event Information 開催日時 2021年2月27日(土)~3月7日(日) 会場 BONCHI 住所 奈良市橋本町3-1 問い合わせ https://kasugayama-artproject.jimdosite.com (同プロジェクト) https://kasugayamatsunagu.com (春日山原始林を未来へつなぐ会)