〈奈良市〉レトロな商店街に小さな本屋さんオープン(ほんの入り口) 2023.7.25 やーさん 奈良市の「船橋通り商店街」に新たな潮流 昭和44年近鉄奈良駅の地下化による油阪駅の廃止までは、駅前商店街としてにぎわいを見せた船橋通り商店街。油阪駅から大仏鉄道記念公園までの約800メートルに140もの店が軒を連ねていたものの、一時は20軒にまで衰退したことも。近年、有機栽培野菜の八百屋やグルテンフリー菓子、季節のおばんざい店など健康志向の店や、レトロ感を愛する若手オーナーのフレンチ店などが、次々とオープン。昔ながらの電気屋さんや仕出し屋さん、パン屋さんなどと一緒に、レトロモダンな様相を呈し始めています。 本好きが高じて書店員から自分の本屋さんをオープン 5月20日、商店街のちょうど真ん中あたり、大宮から内侍原町交差点を結ぶ車道のすぐ北、元漢方薬局のあった場所に、本屋「ほんの入り口」はオープンしました。店主の服部健太郎さん(45)は、大の本好き。大阪のチェーン書店などで店員として約15年働いていましたが、この度独立。 毎正月読むという『読書からはじまる』(長田弘著/ちくま文庫)を手に、店主の服部健太郎さん 「本屋は気になるけど、大型店では本が多すぎて何を選べばいいのかのかわからない、ちょっとハードル高くて敬遠するという人にも、敷居をなくして気軽に手に立ち寄ってもらえるような店をやりたい」と思ったのですとか。 だから店名は「本の入り口」と「ほんの(小さな)入り口」を掛け合わせたもの。 ★読書会やワークショップ企画中! 「うつわの入り口」もあり 人生や趣味嗜好の入門書的なもの、癒やし系と店主が惚れる作家のエッセイなどをそろえる 近くに奈良県立大学、奈良女子大学、育英小中高校、奈良市立佐保小学校などがあり、学生も多い街。中高生向けの新書や、詩・俳句、古典の入門書、メンタルケア本、店主さんが好きな作家のエッセイなどを中心に、1,000~1,500冊程度のこじんまりした品ぞろえです。 ですが、どれも手に取ってみたい本ばかり。気づけばオープンから2週間の間に3回訪れ、8冊の本を購入していました。一番のお気に入りは2回目に行って求めた『雨のことば辞典』(講談社)。 初めて行った日に5冊買ったので、後ろ髪を引かれながらも我慢した本です。それから数日後の雨の日、「買うのは今日だ!」と走りました。気象用語や方言も含め、「雨」にまつわる言葉がこんなにたくさんあるなんて、うれしい驚きでした。 「本には一冊一冊ドラマがあります」と服部さん 書棚の本のタイトル一つひとつが、気になります。手に取ったら、絶対欲しくなるだろうし、懐事情もあるので敢えて手はできるだけ伸ばさないようにし、次回の楽しみに取っておきました。 それにしても、店主さんの本好きというか、本や言葉を愛する気持ちが伝わってくるようなチョイス内容です。作者の気持ちをスッと汲める、共有できる方なのでしょう。そして何かしら心が潤うというかほっこりさせられる内容の本が多いように思います。 まだ本の魅力・楽しさに出会えないでいる人にそれが少しでも伝えられる場所になればとの思いが感じられます。 本屋の閉店が相次ぐ時代、生業としては“無謀” かもしれないという気はあるものの、まずは地域の人や学生さんたちが、本を身近なものにすることで、生活や人生が少しでも楽しく豊かになればと思っているそうです。そのための空間レイアウトやディスプレイにも工夫が見られます。 この「ほんの入り口」さん、本好きさんには言わずもがな、のぞいてみていただきたいし、本に無関心だった方のスモールステップ(ほんの入り口)に一日も早くなりますようにと願いました。 声を大にして言います「冷やかしにでも一回のぞいてみてくださ~い! 何か見つかるかも♪」。そして店主さんに気軽に声をかけて、何でも聞いてみるのがおすすめです。