物忘れを繰り返す、よく作っていた料理を失敗する…。初期症状は物忘れから始まることが多いとされる認知症。今年、厚労省研究班によって発表されたデータによると、認知症患者数は2025年には全国で約472万人に上ると推計される。また若年性認知症、脳腫瘍や頭部外傷などで認知症になることもあり認知症は誰にでもなる可能性がある。自分と家族のために認知症を知り、その介護と予防法を今一度おさらいしよう。
認知症…
原因は脳の病気
認知症とはアルツハイマー型認知症などの病気によって脳の細胞組織が損なわれ認知機能が低下すること。記憶をつかさどる海馬を中心に神経組織が障害を受け、脳が萎縮することで生じる。
折り紙やぬり絵など手を使った作業は予防にも効果的!
折り紙やぬり絵など手を使った作業は
予防にも効果的!
施設ごとに様々な取り組みをされているよ
施設ごとに
様々な取り組みをされているよ
老化と認知症の違い、それぞれの物忘れ
それぞれの物忘れ
認知症による物忘れ
- 新しいできごと自体を覚えられない
- 新しい情報を記憶することが難しく、保持することができない
- 体験そのものがなかったことになってしまう
老化による物忘れ
- 覚えているがうまく思い出せない
- 新しいことを記憶、保持する力はある
- ヒントや何かのきっかけで思い出す
認知症は早期発見が大切!
わずかな変化に気づくことで、早期発見につながることも。初期の段階では進行を遅らせたり周辺症状を和らげたりすることもできる。認知症? と思ったときには医療機関に相談しよう。
中核症状と周辺症状
中核症状
記憶力や判断力の低下など全ての人に現れる
記憶力や判断力の低下など全ての人に現れる
記憶障害
5分前の出来事を忘れてしまう
5分前の出来事を
忘れてしまう
実行機能障害
物事の手順がわからなくなる
物事の手順が
わからなくなる
見当識障害
時間や場所、人が把握できなくなる
時間や場所、
人が把握できなくなる
失語・失認・失行
言葉が出ない。人や物を認識できない。
円滑な動きができない
言葉が出ない。
人や物を認識できない。
円滑な動きができない
周辺症状(BPSD)
徘徊、多動、暴力・暴言、
不潔な行動、
排泄の失敗、異食など
行動症状
徘徊、多動、暴力・暴言、
不潔な行動、排泄の失敗、異食など
心理症状
不安、焦燥、抑うつ、妄想・
幻覚、無気力(アパシー)など
不安、焦燥、抑うつ、
妄想・幻覚、無気力(アパシー)など
周辺症状は適切なケアで緩和できる
\\ 認知症早期発見 //
チェックリスト
- 1. いつも日にちを忘れている
- 2. 少し前のことをしばしば忘れる
- 3. 最近聞いた話を繰り返すことができない
- 4. 短時間に同じことを言うことがしばしばある
- 5. 以前と同じ話などを繰り返す
- 6. 特定の単語や言葉が出てこないことがしばしばある
- 7. 話の脈絡をすぐに失う
- 8. 質問を理解していないことが答えからわかる
- 9. 会話を理解することがかなり困難
- 10. 時間の観念がない
- 11. 話のつじつまを合わせようとする
- 12. 家族に依存する様子がある
12項目のうち4項目以上に当てはまると認知症の可能性が考えられる
Hopman-Rock M, :Int J Geriatr Psychiatry. :2001Apr;16(4):406-14.
参考 「認知症の人を理解したいと思ったとき読む本 / 大和出版」
認知症の介護と予防
介護の最前線で活躍するプロに聞く
心をくみ取った対応を
認知症の予防には、日々の小さな刺激(手先を使うぬり絵やちぎり絵等の作業)や他者との交流(歌う・話す)などが大事です。汚れもの(汚染衣類等)を隠したり、更衣や排泄、入浴の介助を嫌がったりされることがあるのは、羞恥心や自尊心からだと思います。それぞれのお気持ちをくみ取った心理面・技術面での配慮と対応が大切です。『認活アロマ』の利用で不穏や徘徊等の軽減と安眠効果につながりました(2024年3月から実施)。
副施設長 川邨 夫美子さん
役割や存在価値を認める
認知症だからといって全てがダメになるわけではなく、自覚もあります。病気なので家族の怒りの理由がわからないまま自尊心が傷つき、落ち込みウツ状態になることも。自分の役割・存在感を認めてもらえることが喜びにつながります。デイの利用など他者との関わりが大事です。
施設長 橋本 啓子さん
食事・運動・睡眠と社会的活動・精神的な刺激を
栄養バランスの取れた食事と規則正しい生活が大事です。有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)は、脳の健康にも効果的です。友人や家族と過ごしたり活動に参加したりと社会とのつながりを持つことが重要です。また読書、パズル、ゲーム、楽器の演奏など、脳を活性化させる活動を取り入れましょう。
施設長 木全 力さん
利用者さんがハサミで
切って貼り合わせた壁画
いきいきと自分らしく、過ごせるかが大切です。
絵画、折り紙、風船バレー、テーブルホッケーなどのレクリエーションに興じ、懐かしのドラマやカラオケで当時を思い返し、夏祭りなどで非日常を感じていただく。個性や好きなことを伸ばしていける環境づくりにも努めています。「笑って、しゃべって、楽しんで」をモットーに、コミュニケーションを大事に、入居者の行動や考えを否定せず、時にはご家族にも協力いただき、生活のサポートをさせていただいています。
春陽 館長 (株式会社春日苑)
新宅 雅宏さん
昔の写真を使った「回想法」がコミュニケーションの一助に
認知症のケアを行う際に、その人の情報をできる限り得るために、家族の方にアルバムを持ってきてもらうこともあります。言葉だけでは思い出せないことも、写真で視覚的に見ることで、昔の記憶がよみがえってくると表情が明るくなり、当時の状況を多弁に語られます。アルバムやスマホの写真を使った「回想法」は家族同士のコミュニケーションにもおすすめです。
認知症ケアマッピング基礎ユーザー
大西 理恵さん
しっかりとした咀嚼、口腔ケアから認知症を予防
院長 福居 希さん
高齢者のためのおすすめ本
『老いを受け入れいきいきと…』
―サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)での暮らし―
Tel:090-1220-4541
メール:info@csnet-kikaku.jp
4つの不安を取り除く
-
1. すぐに忘れてしまう不安
▶︎ 情報量は少なく、繰り返し伝える -
2. 見捨てられてしまう不安
▶︎ 体に触れ、寄り添う -
3. 今がいつ、どこなのかわからない不安
▶︎ カレンダーや時計を目に付く場所に置く -
4. 次に何をすればいいのかわからない不安
▶︎ 同じ動作を見本として示す
認知症の人をサポートするヒント
安心感と自尊心を保てる環境を作るキーワード
キーワード
-
1. すぐに忘れてしまう不安
▶︎ 情報量は少なく、繰り返し伝える -
2. 見捨てられてしまう不安
▶︎ 体に触れ、寄り添う -
3. 今がいつ、どこなのかわからない不安
▶︎ カレンダーや時計を目に付く場所に置く -
4. 次に何をすればいいのかわからない不安
▶︎ 同じ動作を見本として示す