専門家に聞く “墓じまい(改葬)” 令和のお墓 最前線

近年、お墓を撤去する「墓じまい」やお墓を新たな場所へ移す「お墓の引っ越し(改葬)」が増えている。少子化や生活スタイルの多様化により、同じ場所で墓を代々継承することが困難になったからだ。令和のお墓事情専門家に伺ってきた。

※教えてくれた人
池渕石材工業株式会社
 池渕 泰正さん

① 墓じまい(改葬)の今

墓じまいとは、お墓から遺骨を取り出し、お墓を撤去して更地にし、使用権を管理者に返還すること。
墓じまいで取り出した遺骨を、新しいお墓へ移すことを改葬という。

※法的には改葬は遺骨の移動を指し、墓を移すのは墓の引っ越しという。
厚生労働省の発表によると、令和4年度の全国の改葬件数(お墓の引っ越し)は、過去最多の15万件を超えた。
墓じまい(改葬)が増えている3大理由
墓じまい(改葬)が増えている
3大理由
お墓を継ぐ人がいない
少子化や未婚化により、お墓を継承する人がいなくなった
お墓が遠方にある
生活拠点がお墓と離れていて、墓参りや維持管理の負担が大きい
負担をかけたくない
子や孫に墓を継ぐ面倒をかけたくないと考え、自ら進んで墓じまいをするケースも

② 墓じまい(改葬)の費用は?

墓じまい(墓の撤去)にかかる費用は、区画の大きさや石塔の数にもよるが、標準的な石塔1基の場合、巻き石を含まない場合は15万円前後、巻き石を含むと30万円前後
改葬の場合は、新しいお墓の購入費が別途必要(永代墓の場合だと10万~150万円ほど)。

墓じまい・改葬を行う人の移転先は、永代供養が付いた「墓」「樹木葬」「納骨堂」を選ぶケースが多い。永代供養とは、永代管理料を前納することで、墓地の管理者が遺族に代わって管理してくれるもの。お墓を継ぐ人がいなくても安心で、無縁墓にもならない。
永代供養墓(塔)
納骨堂
樹木葬

③ 墓じまい(改葬)の手順

① 親族で相談する
今のお墓をどうするか?について、相続人と親族でしっかり話し合おう。独断で進めるのは危険。トラブルの元に…。
② 受け入れ先・移転先を決める
● 新しい霊園でお墓を建てる
● 永代供養墓・合祀にする
● 樹木葬にする
※受け入れ先が決まったら、その管理者から「受入証明書」を発行してもらう(④改葬許可申請に必要となる)。
③ 元の墓地の返還申請
従来のお墓の霊園や寺に、改葬・墓じまいの相談をする。返還に必要な手続きを行う。
※場合により離檀料などの支払いも。
※「埋葬証明書」を発行してもらう (④改葬許可申請に必要となる)。
④ 改葬許可申請を行う
行政の許可なしに、お墓から遺骨の取り出しはできない。元のお墓がある市町村の役所へ「改葬許可申請書」を提出して、「改葬許可証」を発行してもらう。
※原則遺骨1体につき1枚が必要
※「改葬許可申請書」の書式は自治体で異なる。
※多くの場合、申請書に加えて「埋葬証明書」と「受入証明書」が必要となる(申請書内に管理者の証明欄を設けている場合も)。
【改葬許可申請書 記載例】
●故人の氏名、本籍、住所
●死亡年月日
●火葬場所と年月日
●改葬理由
●改葬場所
●申請者の氏名、住所、続柄
★墓地外の埋葬等の禁止★
遺骨は、墓地として指定された区域以外に埋めてはいけないと法律で定められている(墓地、埋葬等に関する法律)。違反すると、刑法第190条の死体遺棄罪で罰せられる場合も。
⑤ 墓じまいをする
元の墓から遺骨を取り出して、墓石を撤去(もしくは移動)して、更地にする。
※遺骨を取り出す際に「閉眼法要(魂抜き)」を行うのが一般的
⑥ 受け入れ先の墓所に納骨する
移転先の霊園や寺の墓、納骨堂に遺骨を納める。
※開眼法要(魂入れ)を行うのが一般的

④ 変わる供養、お墓というカタチ

近年、継承者がおらず放置された『無縁墓』が、社会問題になっています。とある墓地では全体の6割が無縁墓で占めると聞いたことがあります。 私たちの生活や思想が、従来の「家」から「個」へと変わったことのひずみなのかもしれません。だから、お墓を継承する負担を減らし、かつ無縁墓にならない『永代供養墓』が人気なのもうなずけます。 これからも時代に応じてお墓の形は変わっていくと思いますが、親や先祖に感謝して自身のルーツに想いを馳せる行為は大事にしたいものです。 先祖と自分が繋がる空間としてのお墓を未来へ繋いでいきたいですね (池渕さん談)。
皆さんはどう考えておられますか。
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