11月25日[月]

〈奈良市〉十輪院で『漫画 君たちはどう生きるか』を無料配布中

奈良市十輪院町(ならまち)にある真言宗醍醐派の古刹・十輪院で、『漫画 君たちはどう生きるか』(原作:吉野源三郎 漫画:羽賀翔一)を無料配布中です。

門前に「学生の皆様(小学生・中学生・高校生・大学生)へ、住職おすすめ図書(中古本)まだ読んだことがない方はぜひ1冊お持ち帰りください。(中略)※大人の方もご興味がおありでしたらどうぞ」という立て看板が置かれ、山門を入った左手の不動堂前に数十冊の同著が積まれています。

閉門(17:00)後は、その後に通りかかった人のために山門前に置かれます

住職のポケットマネーで追加補充中! 5月下旬から1か月間に200冊

住職の橋本昌大師(44)が、2023年5月23日に80冊を置いたところ、6日でなくなり、新たに120冊を追加購入したとのことです。
同寺の山門前は小学生から大学生まで、多くの児童や学生の通学路となっており、「学生時代、お寺の前はよく通ったけれど、門をくぐったのは大人になってからです」という声もよく聞くといい、子どもも大人ももっと気軽お寺に足を踏み入れてほしいと思っているそうです。

スタジオジブリから「君たちはどう生きるか」(7月14日公開)

実はこの本は、戦前からの教養教育の古典。2017年に羽賀翔一氏が漫画化し、2018年3月に200万部を突破した不滅のベストセラーで、日本PTA全国協議会の推薦図書、全国学校図書館協議会の選定図書でもあるのです。

橋本住職はそのストーリーの中にある、ものの見方や社会の構造、関係性といった哲学的なテーマが仏教にも通じるところがあると共感、5年前小学1年生だった長男さんに読ませたと話します。2023年7月14日、宮崎駿監督のスタジオジブリからアニメ映画が公開予定です。今なら子どもたちも関心を持って読んでくれるのではないかと思って、ポケットマネーで中古本を購入・無料配布を始めたそうです。

「思い込みが原因でしんどさから抜け出せないでいる人に、一つの事象の原因を深く(回りくどく)掘り下げていけば、明快化できて進むべき方向性がつかめるのではないかと思います。その考え方を学ぶきっかけになればと思うし、仏教にも共通すると考えます」と話されます。

現時点では持ち帰った人からの感想とかは寄せられていないそうですが、「いつか何かに思い当たった時、『そういえばあのお寺で本をもらったなぁ』と思い出してくれる子もいるかと」と。

(C)2023 Studio Ghibli
記者も1冊いただいた一人ですが、思い起こせば40年ぐらい前にハードカバー本を我が子に読ませていました。漫画本は読みやすく肝心な個所はちゃんと活字で書かれているので、改めて自身を顧みるきっかけになりました。

元興寺旧境内の南隅にある簡素優美な古刹
石仏龕に本尊の地蔵菩薩様

十輪院は、山門(重文)から見える本堂(国宝)の美しい姿が印象的です。一歩中に入ると本堂から池回りまできれいに掃き清められた景観に心が洗われるような気がします。
自伝によれば、元正天皇(715-724)の勅願時で元興寺の一子院と言われ、また右大臣吉備真備の長男・朝野宿禰魚養(あさのすくねなかい)の開基とも伝わります。

石仏龕〈重要文化財:平安時代〜鎌倉時代〉

ご本尊は石造地蔵菩薩様で、花崗岩でできた石の厨子・石仏龕(せきぶつがん)の中央に浮き彫りで祀られています。
左右に釈迦如来、弥勒菩薩が配されています。周囲に仁王、聖観音、不動明王、十王、四天王などが巡らされ、極楽往生を願う地蔵世界を具現しています。
龕前には、死者の身骨や棺を安置するための引導石が置かれ、上部左右には北斗七星をはじめとする星座の梵字が印刻され、天災消除・息災延命を願う厳正利益の進行もうかがい知れるとのこと。東寺の南都仏教の教義を基盤に民間信仰の影響を受けたものとされます。

誕生釈迦仏立像
五劫思惟阿弥陀仏坐像

石仏、絵画などの文化財や魚養塚など見どころ大

そう広くはない境内に、石仏や石塔、魚養の墓と伝わる塚など、拝観させていただくものが多数あります。6月下旬から夏にかけては蓮の花が、ご本尊や本堂・境内を荘厳するかのように清廉な花弁を広げます。

魚養塚
十三重石塔

「みんなのお寺」で読経・写経・写仏・瞑想体験

同寺では、奈良市東向商店街の中華料理店「青天」の上階に「みんなのお寺」(十輪院仏教相談センター)も開設しており、そこでは読経・写経・写仏・瞑想体験のほか、僧侶とラフに話ができる空間があります。誰でも気軽に行けて、「生きるってどんなこと?」「自分って何?」「人生は苦なの?」など、いろいろな人生相談ができます。
東京の「みんなのお寺」は休館中。

【みんなのお寺】
住:奈良市東向町1 ami21ビル2F(東向商店街・南都銀行向かい)
時:10:00~16:30 休:木曜

十輪院寺子屋おやつくらぶ(毎月第1・3木曜日)

同寺ではまた、毎月第1・3木曜日15時から17時の間、「おやつくらぶ」も実施中。近所の幼稚園児から小中高生を対象に、お供えのお下がりのお菓子を放課後におやつとして提供されています。

おやつの後には宿題をしたり、境内でゲームや遊具で遊んだりと楽しい時間を過ごしているとのこと。保護者の同伴も歓迎だそうです。
基本情報 Basic Information
十輪院/じゅうりんいん
  • 住所: 奈良市十輪院町27
  • 拝観時間: 10:00~17:00
  • 休業日: 月曜(祝日の場合は火曜)12/8~1/5、1/27・28、7/31~8/31
  • 拝観料: 境内自由(本堂拝観 大人500円、中学生300円、小学生200円)
  • 駐車場: あり
  • TEL: 0742-26-6635
  • HP: http://jurin-in.com/
朝の勤行10:00~11:00    
夕方の勤行16:00~16:30
※朝勤行・体験作務(8:30~9:20)は無料
※行事や法事(土日祝に多い)で拝観不可の場合あり

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