奈良市三条大路に本社を置く中村建設株式会社は、このたび防災意識を高めてもらおうと、備蓄食料品セットを段ボールに詰めて、社員52人全員の自宅に発送した。
段ボールの中身は、水、レトルト食品、レトルトパックご飯、カップ麺、クラッカーなど食料品が37点。政府が最低限と定める3日分の量を家族3人分詰め込んだ。
きっかけは、同社社長の中村光良さん(59)が、奈良経済同友会で防災について取り組みを始めたことから。同会の広域支援検討委員会の委員長として奈良県に提出する防災についての提言書を作成するため、専門家である関西大学社会安全学部の奥村与志弘教授に協力を依頼。
奥村教授と話をする中で、日本の災害意識は世界でもダントツだが、意識は持っていても備蓄までしている人は6割で、これ以上は伸びにくいと聞いた。
そこで、自主的に望めないなら、会社で手助けすることで、備蓄意識や防災意識も高まるのではと、このたびのプレゼントに行きついた。
南海・東南海地震が近いと言われるが、少なくとも奈良県は津波などの災害は免れられる。
とすると、近畿各地からの防災拠点になると予測し、その備えをする必要がある。
だが、被災者支援の体制ができているとは言いにくく、奈良県民の意識自体が低いと思われる。
中村社長はそんなことを提言書に書き込みたいと話す。
さらに、「いざ発災した時に、あなたの企業は役に立ちますかというアンケートで、何をやったらいいのかわからない企業が多いことを知りました」と。
今回、自社でまず社員に備蓄品を送る活動をしてみることで、社員自身の防災意識を高めるとともに、何をしたらいいかわからないと答えた他社が、これを参考にこうしたこともできると知ってもらえたら」と望んでいる。
特に建設会社として、災害が起こった時には真っ先に支援に行かなくてはいけない業種ゆえに、社員がいざという時に動けるようにしたいとの思いもある。
この備蓄品セットは毎年3月の東日本大震災記念日と9月の防災の日の2回送り、期限切れのないように交換してもらうという。また、入れる段ボール自体を緊急災害用トイレなどに使えるものにならないか、段ボール会社と企画中とのこと。
同社社員の井上智子さんは、「こんな備蓄品を会社からいただけるなんてびっくりしました。自分自身、備蓄はしていなかったので、これを機に防災について考えていこうと思います」と語っていた。
問:0742-33-1001