〈開催レポ〉奈良好きによる奈良好きのためのマニアック奈良市内ガイドツアー 第8回アジールさんぽ 特別宿泊プラン「泊って没頭 お水取り」

奈良国立博物館 特別陳列「お水取り」入場券付き

奈良の春の風物詩「二月堂修二会」を深掘りする宿泊プラン。 国立博物館でお水取りの特別陳列を鑑賞(入場券付)し、寺衆にならった料理を食し、実際にお松明たいまつや行法を拝観して、ホテルで宿泊、翌朝にはガイドと修二会ゆかりの地を歩いて辿る企画。
3月7日、修二会にどっぷり浸かろうと前日の6日から泊まりで全国からいらしたお客様たちと一緒に、アジールさんぽを楽しみました。

「練行衆を倣う」~奈良博「お水取り」観賞と精進風弁当~

3月1日から始まった〝奈良に春を告げる〟と言われる「お水取り」(東大寺二月堂修二会)の本行(~14日)に合わせ、ホテルアジール・奈良では、3/3(月)・4(火)・5(水)・6(木)・10(月)・11(火) とアジールさんぽ「泊って没頭 お水取り」宿泊プランを実施。
二月堂本尊の十一面観音菩薩様に罪過を懴悔ざんげし、除災招福を祈るこの法要は、天平勝宝4年(752)に始められ、「不退の行法」として今日まで一度も絶えることなく続けられてきたもので、今年は1274回目。
6日のお客様はホテルにチェックイン後、それぞれに奈良国立博物館で特別陳列「お水取り」を鑑賞し、お水取り行事の歴史や文化などを事前学習された方、あるいは奈良の街散策を楽しまれた方もいらっしゃったようです。
17時からホテルで早めの夕食。修二会を担う練行衆の「食作法じきさほう」気分を味わう「精進風の松花堂弁当」で腹ごしらえ。デザートには、修二会期間中、須弥壇を飾る「良弁椿ろうべんつばき」の造花を模した名物和菓子のりこぼし」が供されました。

二月堂でお松明を拝観、局での聴聞を体験

19時から始まる「お松明」に合わせてホテルの送迎バスで二月堂周辺まで送ってもらったお客様たち、そこからは自由行動です。それぞれに二月堂の下で今か今かとその時を待ちます。
やがて境内の明かりがすべて消され、上堂する練行衆を先導する松明が登廊を上がり、カタカタカタッとくつ音を響かせて僧が入堂されると、松明が舞台正面に現れ、欄干沿いに北側から南側へと移動。その際、松明を担う童子は両端で松明を大きく振るったり付きだしたりして火の粉を撒き散らしてくれます。
その火の粉を浴びると無病息災で過ごせるというのですが、危険なので堂の真下には入れません。火の粉が舞い上がるたび、観衆から「おお~!」と、どよめきの声が上がります。11人の練行衆の入堂が終わり10本のお松明も終わると、登廊清掃後に一般参拝者が二月堂へ上がることを許されます。
同行した方々は、横浜、北九州市、兵庫県、和歌山県からの8人でしたが、前夜は皆様、舞台中央から観音様を拝んで、四方の局へそれぞれ聴聞に向かわれたそうです。東西南北の局は畳敷き、靴を脱いで上がり、内陣から垣間見える行や悔過と祈りの声明を拝聴された様子。帰り際に外したマスクが、内陣に点る幾多の燈明のススで真っ黒なのに驚かれたとか。練行衆の着衣「紙衣かみこ」も満行の折には随分とすすけていますが、連日、鼻の中もさぞかしのことと察します。

翌朝はお水取りゆかりの地をガイドさんと訪ねる約4km、150分の旅

翌朝9時からまずは修二会を担う練行衆がみそぎを行った地、「川上蛭子えびす神社」へホテルの送迎バスで向かいました。この日は、なら・観光ボランティアガイドの会「朱雀」の2人がそれぞれ4人ずつを案内という、実にぜいたくな散歩でした。 蛭子神社の横を流れる佐保川で禊をしたとガイドさんの説明を受け、清らかな空気の流れる神社で手を合わせて、三笠霊園へ。
上り坂途中、安倍晋三元総理の慰霊碑前でひと息入れて、東大寺の復興に尽力した重源和上の碑(五輪宝塔)にご挨拶。すぐそばの嶋左近尉墓所も教わってから奈良市街を一望。来春オープン予定の監獄ホテル(旧奈良少年刑務所)や聖武・光明天皇陵などを遠望しました。
安倍晋三元総理の慰霊碑
奈良市街

公慶上人のお墓がある五劫院、空海ゆかりの寺から東大寺へ

鎌倉時代に重源上人が創建したと伝わり、アフロヘアで知られるご本尊「五劫思惟阿弥陀像」を祀る五劫院ごこういんへ。こちらへは墓所の公慶上人のお墓だけの案内予定が、うれしいハプニング! たまたま本堂の畳替えで正面扉が開いており、運良くそのご尊顔に拝することができました。皆さん、その思いがけないラッキーな巡り合わせに大喜び。
五劫院
五劫院 見返り地蔵
寒波の再来で時折白いもののちらつきもある中、テンションが上がったまま、東大寺の別当だった空海寺へ。空海が草庵を営み、自ら彫刻した秘仏「阿那地蔵尊」が祀られ、東大寺の歴代僧侶が眠っておられます。
門前には平城宮跡の保存運動に生涯をかけて尽力した棚田嘉十郎の墓が平城宮跡を望む形で建てられています。
正倉院の北側から東を回って東大寺へ向かう途中、「いにしえの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな」で有名な「奈良八重桜(ナラノヤエザクラ)」の原木の地 知足院ちそくいんを見上げて、大仏殿の裏手へ。講堂跡の史跡整備工事中の横手を二月堂へ向かいました。東大寺寺領地へ。途中、今年の練行衆の塔頭前をいく棟か通るのですが、その門口にかけられている「輪注連縄」に注目しながら「こちらもですね」と黙礼しました。
空海寺門前
知足院
輪注連縄

風情のある裏参道から二月堂へ

二月堂へは大仏殿の裏から上がる裏参道を上がります。途中、煙出しのある大湯屋の建物を見て、その前の田んぼや小川に大仏蛍(ゲンジボタル)が出るという話も聞けました。土塀(築地壁)と石畳の風情ある景観を楽しみながら、いよいよ二月堂登廊の下へ。立てかけられたお松明や参籠宿所・食堂などの説明を受けて登廊の石段を上がります。
立てかけられたお松明
登廊の石段
北の茶所には12日に使われる籠松明(約60㎏)と通常の松明(約40㎏や資料が展示されています。ここでも運良く前日のお松明(杉葉)の燃え残りがいただけることになり、災難除けにご利益があるとのことで、皆さん有り難く持ち帰られました。
北の茶所
籠松明(左)と通常の松明
杉葉の燃え残り

舞台から奈良市街眺望、閼伽井屋から鐘楼、西門へ

舞台からは大仏殿の大屋根とその向こうに広がる奈良市街・生駒山系などを見晴るかしながら、ガイドさんの説明に耳を傾けました。南側の飯道神社手前の手水舎の立派な彫り物も必見です。
下りは途中の多羅(葉書の木)の大木や「唐草」「亀甲」「青海波」などの模様が刻まれた石段もチェックしながら閼伽井屋あかいや(国重文)へ。12日(13日午前1時頃)、中の井戸から汲み上げた御香水を観音様にお供えすることからこの行事が「お水取り」と呼ばれること、若狭国の遠敷明神が遅刻したお詫びに献じたとの逸話も披露され、皆の笑いを誘いました。
二月堂舞台から
手水舎
閼伽井屋
中門への途中では日本三名鐘の一つ「奈良太郎」(国宝)が吊られた鐘楼で、撞座と橦棒の位置がずれているのは、まともに当てると音が大きすぎるからとのエピソードを聞かされ、皆さん笑いながらうなずかれていました。
大仏殿への途中では金色に輝くオブジェ。高さ20mあり、東大寺にあった七重塔の相輪の復元模型と聞いて、かつての塔の総高を想像しました。
「奈良太郎」(国宝)
七重の塔相輪復元模型
そしてちょうどお昼頃に中門着。ガイド氏は「ここで解散ですが…」と言いながら、右手の兜跋毘沙門天とばつびしゃもんてんを指し、足元に地天じてん女と何となくかわいい邪鬼がいることを案内。皆さん「わぁ、こんなところに!」と、腰をかがめて柵の隙間からのぞき込んでいらっしゃいました。
東大寺中門前

何度も来ているけれど、知らなかったことばかりでした!
また来たいです♪

「奈良へは何度も来ていますが、今日のコースは知らなかったことばかり」と北九州市からの夫人と息子さん。和歌山からの女性二人も口をそろえて「ほんと。ある程度知ってるつもりだったけど、こんな深掘りは初めて。また来たい」と同調し、兵庫県からという方は、「夕べのお松明も声明も、映像では見たことがありますが、スケール感とか生の音、この場の空気やお松明の燃え焦げるにおいなどは実体験でしか味わえないです」とこの企画を心底楽しめたご様子。「86歳の母が奈良女子大時代に4年間過ごし、万燈籠とお水取りだけは…と言ったので」と横浜から来られた女性も、お母さまへの土産話満載で帰途に就かれたことでしょう。
開催期間
2025年3月3日(月)~6(木)・10(月)・11(火) 各日開催
宿泊場所
ホテルアジール・奈良
奈良市油阪町1-58(JR奈良駅から徒歩5分、近鉄奈良駅から徒歩7分)
朝のさんぽ行程
ホテル=蛭子神社…三笠霊苑…東大寺裏参道…二月堂…中門 約4km
(=区間はバス、…区間は徒歩)
参加料金
宿泊(1泊朝食・夕食付)13,000円(税込)/人~
予約受付期間
3日前 18:00まで(定員に達し次第終了)
定員人数
各日25名(1名から実施いたします)

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