12月18日[水]

〈三郷町/柏原市〉もうすべらない!? 昭和7年の地すべりで潰れたはずのトンネルを見学!

大阪府と奈良県の府県境に位置する「亀の瀬地すべり」のガイドツアー(無料)に参加

2024年12月号のyomiっこ「2024円の旅」でも鮎くんが紹介していた「亀の瀬地すべりガイドツアー」(無料・要予約)に、女子スタッフ(ごえちゃん、みょちゃん、ゆずちゃん)が後追い取材として参加してきましたー!

亀の瀬地すべり対策施設ガイドさんと一緒に見学できる無料のツアー。以前に参加したスタッフやーさんも「すごく勉強になったよ! 行ってきた方がいい!」というので、これは行かなくては・・・と早速予約を取りました。

場所は、三郷町と柏原市(大阪)の間、JR三郷駅から徒歩30分、JR河内堅上駅からは徒歩20分の「亀の瀬地すべり歴史資料室」。車だと、国道25号から大和川沿いを大阪方面へ進むと橋に案内があるので、すぐ分かります。

この日の参加者は約10人。ボランティアガイドの森さんが、資料室から順番に案内してくださいました。ホント、森さんの説明が分かりやすい♪ プロジェクションマッピングなどの見どころも満載で、90分のツアーがあっという間でした! それでは体験レポートをどうぞ。

地すべりの歴史とメカニズムを学ぶ「亀の瀬地すべり歴史資料室」

ツアーのスタートは、亀の瀬地すべりの歴史と仕組みが学べる「亀の瀬地すべり歴史資料室」。まずはボランティアガイドさんから、地すべりの被害やその背後にあるメカニズム、そして地すべり対策として行われたトンネル工事について詳しい説明を受けました。

展示されているパネルやジオラマが非常にわかりやすく、地すべりの規模やその影響を目で見て理解できるのが魅力的。特に、地すべりによって亀の瀬トンネルが廃線に追い込まれたエピソードや、トンネルの復旧までの歴史には驚き! ガイドさんの丁寧な説明で、専門的な話もすんなりと頭に入りました。

〜資料室で説明を受ける様子〜

亀の瀬の地すべりってなんだろう?

「亀の瀬」は、奈良と大阪の府県境に位置し、奈良盆地の水を一手に集める大和川が流れる渓谷地帯。この地は「万葉集」の和歌にも多く詠まれていて、昔から多くの人々が行き来する道として利用されていました。現在も、国道25号やJR大和路線が大和川と平行して走り、重要な交通路となっています。
奈良盆地も数百万年前は湖だったそうで、地殻変動で山がきれ、水が大阪方面へ流れたのが大和川の始まりなんだとか。府県境をまたぐ古い生活道は「暗峠」や「竹内街道」もあるけれど、一番標高が低い川沿いの道を利用する人が多かったそうです。
当時の様子(地すべり被害)
当時の様子(大和川改修工事)

JRの三郷駅-河内堅上駅付近は、はるか昔から地すべりしていた場所でした。昭和6~7年には大和川に向かって大きく地すべりし、川底が隆起して水がせき止められて、さらに豪雨も重なり奈良県側は浸水。そして奈良-大阪間を繋ぐ鉄道(国鉄関西本線)の亀の瀬トンネルも圧壊しました。

上下線とも崩壊した線路は、対岸へ急遽移設(第三・第四大和川橋梁)。大晦日までの約半年で現在のルートを開通させました。
急遽架けられた「第四大和川橋梁」
ここに注目!
ものすごく工期が短く感じるけれど、新年の伊勢参詣に間に合わせるためだったそうよ。代替ルートは、電車が走る橋の下に、川と直角にトラス橋を組んで支える構造になっていて日本でも珍しく、フォトスポットにもなっているよ。
大和川にドシンと構える亀岩
「亀の瀬」の由来にもなった巨石「亀岩」も見ておこう! 大和川の中に今も残る亀に見える大きな岩。この岩が動いたら、洪水になって奈良盆地が水に浸かると言われていたそう。

で、地すべりってなぁに?

そもそも地すべりとは何かというと、この一帯のように、地中深くにある固い岩盤の上に乗っている土塊が、雨や地下水などの影響でゆっくりと動き出す現象のことです。

ちなみにがけ崩れは、地層の風化や劣化で急な斜面が一挙に崩落する現象のことなので、地すべりとはまた別のもの。

記録は明治以降からだけど、約4万年前から地すべりは起こっていたそう!

もうすべらない!!  実はすごい 地すべり対策工事

国はこの地すべりを止めるために60年以上前から対策工事をしています。まず、土塊の一部の土砂を取り除き(18年かかったんだって!)、次に地中の水を外に出す集水の井戸(集水井)を掘ったり、山の中に水抜きのパイプ(集水ボーリング)を通したりして地下水を集め、その水を排出するためのトンネルを作りました。

これと同時に、すべり面の下の岩盤下まで杭を設置し、土塊のすべりを抑制する工事を進めました。
集水パイプは約4,000本! 総距離約160kmにもなるそうです。井戸は54基、杭は深礎工170本、鋼管杭工560本。す、すごい数! 杭と言っても、最大で直径約6mもある巨大なものなので、掘りながら外側を固め、また掘って固め、100m掘ったら最後にコンクリートを詰めるっていう気の遠くなる工事・・・。この工事によって、地すべりはほとんどなくなったそう。現在も奈良側の一部で対策工事が行われています。
これこそまさに【すべらない聖地】!? 受験生の合格祈願スポットになったりして(笑)

まずは、排水トンネルの見学…まさかの「偶然の発見」!?

資料室で知識を深めた後、いよいよ実際の現地見学が始まります。最初に訪れるのは、亀のマークが目印の『1号排水トンネル』。ここでは、地すべり対策として地下水を排出するために設けられた「集水ボーリング」や「集水井」を下から見学できます。

トンネル内は排水パイプなどから集めた水が常に流れてきていて、溝を通って外に排出されていました。中は夏は涼しく、冬はあたたかい。洞窟探検気分で、大人になってもワクワクしますね。

7本目の排水トンネルを掘っている2008年に、昭和6~7年の地すべりで崩壊してどこに埋まっているか分からなくなっていた鉄道トンネルを、なんと偶然発見!! 最も古い約120年前の明治時代のトンネルの一部分が、ほぼ当時の原形のまま見つかったというから驚きです。このうち約40mを貴重な遺構として保存されることになりました。もし掘る角度が違っていたら発見できなかったかと思うと、潰れず残っていたトンネルとの再会は必然だったのかもしれませんね。

〜排水トンネル見学の様子〜

次に、外から覗き込む巨大集水井。圧倒的スケールに驚き!

外に出て巨大な井戸(集水井)を上から見学します。この井戸は、地下水を排除するための重要な設備で、深い構造が地上からも確認できます。みんな井戸の縁に近づいて顔を覗き込む姿が印象的。集水井の奥深さと、その役割の重要さを実感できる貴重な機会です。

ここだけ見ると、面白いですね

いよいよ、遺構の亀の瀬トンネルを見学

さあいよいよガイドさんに連れられ遺構の亀の瀬トンネルの中を見学。参加者が連なって7号排水トンネルを進んでいくと、遺構の亀の瀬トンネル(旧大阪鉄道亀瀬隧道)が現れました。明治に作られたトンネルの下部は、長いレンガと短いレンガを交互に積む「イギリス積み」で振動に強く、アーチ部は長いレンガで作る「長手積み」。天井には蒸気機関車の通過で付着した煤煙が残り、トンネルの突き当たりは地すべりがトンネルを壊して崩れてきた土砂がむき出し。おおぉ、何ともリアル。
この亀の瀬トンネルの中で、約10分のプロジェクションマッピングが上映されます。春夏秋冬で内容が変わるそうなので、あたらめて訪問してみるのも楽しそう♪ トンネル内を見学できるのは、このガイドツアーのみ。90分と45分コースがあるので、必ず予約してから訪問してくださいね♪

〜旧大阪鉄道亀瀬隧道での見学の様子〜

ガイドの森さんもyomiっこ読者だったのでひと盛り上がり♪ この日の記念に、参加者の皆様へ呼びかけて記念写真をパシャリ。
短い時間だったけれど、この日初めて会った参加者の方々と一緒に学ぶことができて、なんだか仲間意識が♪
何気なく通過していた国道25号の横で、国をあげての大規模な工事が進んでいたとを知りませんでした。偶然の発見とこれを保存し無料公開されていること、そして私たちが安全に生活できるよう大規模な工事が行われていたことに、感銘を受けました。鉄道を通すために当時の職人たちが高い技術をつぎ込み、その鉄道トンネルを守るために多くの人々が努力を重ね、今この亀の瀬トンネルを見学することができるのです。ぜひ一度、足を運んで実際にご覧いただければと思います。
ガイドツアー中に虹が♪
基本情報 Basic Information
亀の瀬地すべり 歴史資料室
  • 住所: 大阪府柏原市峠
  • 営業時間: 9:30~16:30(売店は土日のみ)
  • 定休日: 月曜日(月曜日が休日の場合は火曜日)、年末年始
  • 駐車場: あり
  • TEL: 072-978-8165
  • HP: https://kamenose-infratourism.jp/

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