12月26日[木]

〈奈良市〉春日大社で奈良市出身作曲家 海田庄吾さんの一夜限りの奉納演奏が行われました

去る11月3日(日祝)、春日大社 夫婦大國社のご修繕記念として、春日大社で海田庄吾さんの奉納コンサートが開催されました。

海田さんは奈良市出身の劇伴作曲家で、映画のサウンドトラックや、ドラマの挿入歌などを数多く手掛けておられます。

コンサート当日は、前日の豪雨から変わって星が綺麗に見える晴天で、演奏は春日大社の中門・御本殿に向かって、約120人のお客さんの前で奉納されました。

あまり聞き馴染みのない「奉納演奏」とは、神様に向かって音楽や芸能など形のないものを奉納する神聖な儀式のこと。春日大社でも約1200年ほど前から変わらずこの林檎の庭でお祭りの音楽が奉納されてきましたが、今回奉納される「映画音楽」といったジャンルは初めてのことだそう。演奏に先立ち、御本殿への拝礼とお祓いの儀式があるのも奉納演奏ならではの光景です。

全13曲一夜限りの特別演奏。
この日のために描き下ろした特別奉納曲も

今回演奏いただいたのは、海田さんが手掛けた映画・ドラマ音楽を再編曲した12曲、そして今回のコンサートのために特別に用意された新曲「辿り(たどり)」の全13曲。バイオリンとビオラ、チェロ、コントラバス、テノール、ギターの9人編成での演奏です。

当日配られたプログラム冊子には、一曲ずつ作品に対する想いこの曲ができた背景使われている楽器などが書かれており、作品を知らない陪観者にも楽しめるようにとの配慮が込められていました。(後から聞いたら曲への想いが溢れすぎて20ページの冊子になってしまったそうで…)

*プログラムより
●ヴァイオリン/海田仁美、相原瞳
●ヴィオラ/後藤彩子、中田美穂
●チェロ/福富祥子、中島紗理
●コントラバス/関一平
●テナー/水野亜歴
●ギター/海田庄吾

演奏曲
・映画「喜劇 愛妻物語」メインテーマ
・ドラマ「正体」メインテーマ
・映画「身代わり忠臣蔵」メインテーマ
・映画「愛の渦」Wirbel der Liebe
・映画「水平線」メインテーマ
・映画「北の桜守」メインテーマ
・映画「雑魚どもよ、大志を抱け!」友情のテーマ
・映画「犬鳴村」主題歌HIKARI
・映画「ある閉ざされた雪の山荘で」メインテーマ
・映画「銀河鉄道の父」メインテーマ
・映画「百円の恋」一子のブルース
・特別奉納曲「辿り」
・映画「わさお」主題歌 僕の宝物

個人的お気に入りは、3曲目の映画「身代わり忠臣蔵」。
崖っぷち坊主が挑むドタバタコメディを彷彿させるノリの良いメロディーと特徴的なギターの音色、浮遊感のある伴奏が、異国の音楽のようで日本らしさもある不思議な感覚。もっと続きを聴きたい!と前のめりになってしまいました。

そして5曲目の「水平線」。
震災による津波で妻を失い深い傷を抱える主人公の葛藤と再生の物語。この曲では、海からの声を表現するにあたり「炭」の音が楽器として使われています。炭を擦り合わせて出る暗闇に吸い込まれそうな儚いサラサラ音と、叩いて出る力強いパキッとした音が、映像の一部を見ているようで印象的でした。

そして特別奉納曲の「辿り」は、平和を願う曲として作られました。今年はさまざまな災害や事故があり、いまだ続く世界の争いも心を傷める出来事のひとつです。
どの曲においてもそうですが、海田さんがつくる曲には作品への敬愛と穏やかな心を願うメロディーが組み込まれており、聴く人も演奏する人も純粋に音楽を愉しむことができる平和な時間が流れます。

最後のあいさつで紹介いただいた、協賛者からのメッセージ「奉納する側が楽しむことを神様はお楽しみになるんですよ」の言葉がまさにそれだなと思います。

国家国民の平和を願い、災害の復興をお祈りし続けている春日大社に相応しい奉納コンサートとなりました。

平和を願って作曲、編曲をしました。そして奏者みんなで心を込めて演奏させていただきました。聴いてくださっている皆さまの思いものせて神様にきっと届いたと信じています。

奉納演奏に参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。

海田 庄吾
かいだ・しょうご/奈良県奈良市生まれ。 幼少よりバイオリン、ギターを習得する。
管弦楽だけにとどまらず、あらゆる音楽の精鋭達とのセッションを通して得たユニークな音楽表現で多くの映画に参加している。

『百円の恋』(武正晴監督作品)でアカデミー賞 外国語映画賞の日本代表に選ばれ、『北の桜守』(滝田洋二郎監督作品)で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。

今年は『身代わり忠臣蔵』『水平線』『ある閉ざされた雪の山荘で』が公開された。

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