11月21日[木]

〈奈良市〉霜降の古都を彩る『第76回 正倉院展』

第76回 正倉院展

令和6年10月26日(土)~11月11日(月)
全17日間、会期中無休  

756年、聖武天皇の七七忌(四十九日)に際して光明皇后が天皇の遺愛品を大仏に献納したことに始まり、東大寺の重要な資財を保管する正倉院正倉に伝来した正倉院宝物。

その数は約9,000点にものぼり、その内の約60点が毎年秋の点検時期に合わせ『正倉院展』として、奈良国立博物館にて一般公開されています。

1946年に始まり、本年で76回目の開催となる今回は57件の宝物が出陳、うち10件が初出陳となります。中には一生に二度見られるか分からない至宝もあるかも?

『国家珍宝帳』に表れる聖武天皇ゆかりの品々

本年も聖武天皇の遺愛品の献納時に作成された『国家珍宝帳』に記載される天皇ゆかりの品々が出陳。「紫地鳳形錦御軾(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく)は聖武天皇の持ち物にふさわしい錦張りの肘置き。

体を預けるのに適した固さを考慮したとみられ、マコモとみられる植物素材を束ねて畳表で巻き、真綿を詰めて麻布で包んだ後、表に錦を張っています。

錦に織り表される葡萄唐草の円文で取り囲まれた鳳凰は、西アジア由来の動物円文を唐代美術の様式によって昇華させた格調高い見事な文様構成です。

紫地鳳形錦御軾/北倉47
紫地鳳形錦御軾(部分)/北倉47

「花鳥背円鏡 附 帯、紙箋(かちょうはいのえんきょう つけたり おび、しせん)は『国家珍宝帳』に記される聖武天皇ゆかりの鏡20面のうちのひとつ。白銅鋳造の大型円鏡で、鏡背には唐花や瑞雲、飛鳥といった文様が浮き彫り風に鋳出されています。

その繊細な表現は、当時の一級品としての格調高さを示しており、また唐代の銅鏡と金属の組成が近いことから、唐からの舶載品とみられています。

花鳥背円鏡 附 帯、紙箋/北倉42

「鹿草木夾纈屏風(しかくさききょうけちのびょうぶ)は『国家珍宝帳』に記載される17組の「驎鹿草木夾纈屏風」の一部にあたるもの。大きな樹木のもとで草花をはさんで向かい合う2頭の鹿を表し、周りには鳥や草花を配します。こうした文様は西アジアに起源があるそうですよ。

また夾纈とは、図柄を彫り出した板できれをはさみ、複数の色を使って染める板じめ染めの技法のこと。本品では二つ折りのきれをはさんで左右対称の文様を染め出しています。

鹿草木夾纈屏風/北倉44

いろどり華やかなガラスの宝物たち

今展では色とりどりのガラスを用いた宝物の数々も見どころ。「碧瑠璃小尺(へきるりのしょうしゃく)」「黄瑠璃小尺(きるりのしょうしゃく)は組み紐で吊り下げられた小さなものさし。

実用品ではなく、腰帯に通して用いる飾りだったと考えられており、奈良時代の宮廷のオシャレを想像させる品となっています。金泥・銀泥で付けられた目盛りといった芸の細かさにも注目!

碧瑠璃小尺、黄瑠璃小尺/中倉111、中倉112

深緑・浅緑・碧・黄のカラフルな「瑠璃魚形(るりのうおがた)も腰飾りのひとつ。宮廷における身分証明として魚形の割り符を腰に付ける制度があったそうですが、本品は本来の割り符の機能を離れ、持ち主の高貴さを示す装飾品だったとされています。

ガラス質の釉薬が持つしっとりとした艶感が魅力の「黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)。正倉院に伝来した宝飾鏡のひとつで、背面に十二弁の宝相華文が表されています。

花弁は銀の薄板に黄・緑・深緑の七宝釉薬を焼き付け、文様の区画線には鍍金が施されています。花弁の入り隅には霰文様を打ち出した金板がはめ込まれ、緑と金色の対比が美しい品に。

黄金瑠璃鈿背十二稜鏡/南倉70

奈良時代の工芸技術の高さにも注目!

ガラスや染料が織りなす色の鮮やかさはもちろん、1300年前の職人が手掛ける技術の高さにも目を見張るものがあります。「沈香木画箱(じんこうもくがのはこ)もその一つ。

表面は沈香の薄板を貼って甃文を表し、象牙やコクタン、矢羽根文の木画を用いて区画線を描きます。加えて床脚の束は象牙を紺色に染めて草花文を彫り、箱の内側にはビャクダンの薄板を貼って錦の内張りを入れるなど、舶来の高級素材をぜいたくに使用している様がうかがえます。

これらの装飾などから、貴重な品物を納めて仏に捧げるための箱だったと考えられています。

沈香木画箱/中倉142
沈香木画箱(部分)/中倉142

「紫檀金銀絵書几(したんきんぎんえのしょき)は巻物を広げて見るための台。これも貴重な木材であるシタン製で、表面には金銀泥で草花や飛鳥を描き表します。経巻を広げる台であったとの説があり、何らかの仏教儀礼に用いられた可能性があるそう。

紫檀金銀絵書几/南倉174
紫檀金銀絵書几(部分)/南倉174

さらに本年は、宮内庁正倉院事務所が製作した宝物の再現模造品も多数展示され、あわせて観ることで宝物により深く親しめる内容になっています。

“シルクロードの終着点”として遠い海の向こうから多くの文物が集まった奈良の都。1300年間守り継がれる至宝の数々を間近に、国際色豊かな文化が花開いた天平時代に思いをはせてみて。

正倉院とは…

奈良時代の官庁や大寺には、税で徴収された米や布などを納める「正倉」が設けられており、この正倉がいくつも集まった区画を「正倉院」と呼んでいました。

しかし、年月とともに東大寺の正倉院内の正倉一棟を除き、他の正倉院は全てなくなってしまったため、現在「正倉院」といえば、東大寺のこの一棟を指します。

東大寺正倉院正倉

第45代聖武天皇の遺愛品および東大寺の寺宝、文書類などが収蔵され、現在は西宝庫・東宝庫に分け、空調を備えた鉄筋コンクリート造の新宝庫で保管されています。

イベント概要 Event Summary
開催日
2024年10月26日(土)〜2024年11月11日(月)
開催時間
8:00~18:00(金・土・日曜、祝日は20:00まで)
※入館は閉館の60分前まで
開催場所
奈良国立博物館 東新館・西新館/奈良県奈良市登大路町50
料金
一般2,000円、高大生1,500円、小中生500円
[レイト割※]一般1,500円、高大生1,000円、小中生無料
※月~木曜は16:00以降、金・土・日曜、祝日は17:00以降の「日時指定券」に適用
お問合せ
050-5542-8600(ハローダイヤル)
正倉院展公式サイト:https://shosoin-ten.jp/
【チケット取り扱い】9/6(金)10時~販売開始
■ ローソンチケット[Lコード:59600]https://l-tike.com/76shosoin-ten/

■ CNプレイガイド[Cコード ※入館開始時間ごと:①月~木曜日:午前8時~正午 237-091、②月~木曜日:正午以降 237-092、③金・土・日曜日、祝日:午前8時~正午 237-093、④金・土・日曜日、祝日:正午以降 237-094]
【電話(自動音声)0570-08-9920による受付のみ】

■ 展覧会オンラインチケット(https://www.e-tix.jp/shosoin-ten/

■ 美術館ナビチケットアプリ
事前に「美術展ナビチケットアプリ」のダウンロードが必要です。美術展ナビチケットアプリはスマートフォン専用となります。(推奨環境:iOS 13以降、Android 6.0以降)
※観覧には原則、事前予約制の「日時指定券」の購入が必要です(無料対象者を除く)。
※日時指定券は当日各時間枠開始時刻まで販売

奈良国立博物館/ならこくりつはくぶつかん
  • 住所: 奈良市登大路町50番地 奈良公園内
  • 開館時間: 9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)※時期により異なる場合あり
  • 休館日: 月曜、11/12、12/28~1/1
  • 観覧料: 一般700円、大学生350円、高校生以下無料 ※特別展の観覧料は展覧会ごとに異なる
  • 駐車場: 博物館に専用駐車場はありません(近隣に有料Pあり)
  • TEL: 050-5542-8600(ハローダイヤル)
  • HP: https://www.narahaku.go.jp/

人気記事とあなたへのおすすめ